
ガストロノミーツーリズム(美食の旅)が世界で広がりをみせる中、注目を集めているのが中欧ポーランド。トラディショナルとモダンをミックスさせた新ポーランドキュイジーヌの魅力について、6月初旬に来日した同国ミシュランシェフたちに聞いてみました。
世界のグルメシーンにおいてポーランドが注目される理由

ヨーロッパの中でも比較的物価の安いポーランドは、リーズナブルに美食を体験できるとあって、今世界のグルメファンから注目されているガストロノミーツーリズム・デスティネーションのひとつです。

ヨーロッパの中心に位置するポーランドは、古くから東西の文化が交流し地域ごとに豊かな食文化が育まれてきました。ポーランドを代表する料理といえば、水餃子風のピエロギやタタール(ビーフタルタル)、ビゴス(ザワークラフトの煮込み)、ゴウォンプキ(ロールキャベツによく似た)など。
ほかにも、ポーランド南部でつくられるスモークチーズ「オスツィペク」、ヴァルミア・マズーリ地方の湖で育つ「キャビア」、北東部で親しまれているバウムクーヘンに似た「センカチ」など、各地にオリジナルな食が存在します。

キャビアといえば、ポーランドは中国に次ぐキャビアの産地。ミシュランシェフたちが好んで使うアントニウス(Antonius)のキャビアは、1缶に1匹のチョウザメからとれる卵しか入れないそうで、最高級品とのこと。
このようにポーランドの各地方には、古くからの伝統製法で丁寧に作る手料理が残っていて、そんな食カルチャーも、食の旅として注目される理由のひとつです。
ミシュランシェフたちに聞く料理への思い、ポーランド料理のトレンドは?

2025年6月初旬、ポーランドから5名のミシュランシェフが来日し、2度にわたって東京永田町のポーランド料理店「アニ・ムルムル(Ani MRU MRU)」で日本のメディア関係者との交流会が行われました。その目的は、食意識の高い日本人にポーランドで本格的なガストロノミーツーリズムが楽しめることを知ってもらうこと。

近年のポーランドの食トレンドとしては、ポーランド料理の原点に立ち返り、かつてよく使われていたが忘れられかけている食材を再発見する動きがあるといいます。
スコルゾネラ(黒ゴボウ)、ズブロッカの原料であるバイソングラス、キクイモなどがその例です。実は、日本のラーメンやオニギリも大変人気があり、なんとワサビの有機農場も存在し、その隣の蒸留所でワサビウォッカを製造しているというから驚きです。

来日したシェフの3名に下記を尋ねてみました。
Q:あたなの料理で一番大切なエッセンスは何ですか?
A:ポーランド料理は私が幼い頃から親しんできた味であり、私にとって常に心に寄り添うものです。父が作ってくれたソーセージの味や、茂みから摘んでそのまま食べたイチゴの甘酸っぱさを大切にしています。料理の本質は「素材」。土地の最高の旬素材を使い、長年学んだフランス料理と英国料理を取り入れ、自分の記憶にある伝統料理にプラスしてゲストに提供しています。(バルトシュ・シムチャク(レストラン「Rozbrat 20」料理長)

Q:あなたが料理を作る上で、最も大切にしていることは?
A:「味のバランス」、「旬」、「素材」「創造性」、「ゲストの好みを理解すること」です。そして常に「コンフォート・フード(心を満たす料理)」という、自らの哲学を意識しています。私の役割は、市場で最高の食材を選び、その食材の季節感を最大にひきだして、ゲストの記憶に残るような料理として提供すること。今、ポーランドのグルメ界では、海外で経験を積んで戻ってきたシェフたちの“職人”としてのレベルを上げることを目指しているのです!(ピオトル・ヴイチク「Koneser Grill」料理長)。

Q:あたなが手がけた料理の中で、伝統的なレシピを現代風にアレンジしたものはありますか?
A:ポーランドではスープの文化が古くから根付いていて、家庭では必ずスープとメインディッシュのセットが出されます。私自身もスープが好きなので、季節ごとにスープをメニューに取り入れています。たとえば、真珠麦入りの「Krupnikクルプニク(大麦スープ)」や、自家製のライ麦発酵液を使った濃厚な「Zurekジュレック(白ソーセージ入りの酸味スープ)」、または「Zalewajkaザレヴァイカ(ベーコンと野菜たっぷりのスープ)」などがお気に入りです。今では忘れられつつあるポーランドの典型的な味を紹介する良い機会になると考えています。(マレク・ブラコフスキ(レストラン「Butchery and Wine」料理長)
ポーランド版ミシュランガイド最新版が6月に発表

6月10日に2025年度のポーランド版ミシュランレストランが発表され、2つ星レストランが1軒、1つ星レストランが6軒、合計7軒が星を獲得。価格以上の満足が得られるビブグルマンには21軒、そのほか推奨レストランを含めて全108軒が選出されました。
ミシュランガイドに掲載されている都市、ワルシャワ、クラクフ、ブロツワフ、ポズナン、バルト海の三連都市(グダンスク、グディニャ、ソポト)のミシュランレストランを巡りながら、美食と観光を楽しむポーランドの旅をプランしてみてはいかがでしょうか。
大阪・関西万博に出展しているポーランド館ではミシュラン・グリーンスター受賞レストラン「エリキシール Eliksir」 の本格ポーランド料理が堪能できるので、まずはそちらで試してみては?

ポーランド政府観光局

2025.06.30(月)
画像提供=ポーランド政府観光局(Polish Tourism Organisation)、マチェイ・コモロフスキ(Maciej Komorowski )、ラファウ・メシュカ(Rafal Meszka)