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 完璧主義で、自分に厳しすぎた──そんな過去の自分を少しずつ受け入れながら、心と体のバランスを大切に生きるようになった菜々緒さん。今ハマっているという筋トレや旅、そして30代になって芽生えた変化まで、菜々緒さんが大切にしていることを伺いました。

「30代に入って、心と体のバランスを大切にするようになった」

──俳優というキャリアを積んでいくなかで、仕事への向き合い方に変化は生まれていますか?

 デビューした当時から、俳優という仕事がとにかく大好き。デビューしてからは「休みたくない」「もっと働きたい」の一心でコンスタントにさまざまな仕事をお引き受けさせていただいていたのですが、30代にさしかかったくらいのタイミングで「仕事をもっとしたい」という気持ちに体が追いつかなくなってしまったんです。

 当初はその気持ちと体のアンバランスさに歯痒さを感じていたんですが、今は現実を受け止めて自分と向き合う時間を大切にするようになりました。これまで多忙を言い訳に向き合ってこなかった思考のクセにも向き合っていくうちに、より生きやすくなった感覚があります。

──どのような思考のクセを持っているのでしょうか?

 良くも悪くも完璧主義すぎるんですよね。自分の失敗は許せないし、責めてしまう。とにかく自分に厳しすぎました。完璧を目指しすぎても、苦しくなるだけだと気づけてからは、ちょっとずつ前向きになれている気がします。以前より人間関係も構築しやすくなった感覚もありますね。これまであまり語ってこなかった弱さをこうやって少しずつでも伝えていくことで、役の幅も広がっていったら嬉しいですね。

美しい海を旅して、新しい視野を広げていく

──映画『キャンドルスティック』では、菜々緒さん演じる杏子が株のチャートを見て「美しい」と感じ、心を動かされるシーンが印象的でした。最近、菜々緒さんご自身が何か美しいものに触れて、心を揺さぶられた経験はありますか?

 リフレッシュしたいときは必ず海に行くんです。旅行先は必ず海がきれいなところと決めていて。美しい自然に触れるたびに、「地球ってやっぱり美しい。この星に生まれてよかった」と感動します。

 いつも同じところにいると心身ともに停滞してしまうので、そこから抜け出して新しい視野を見つける機会を設けるようにしているんです。刺激にあふれた東京で感性を磨くのも、豊かな自然に囲まれながらただただのんびりするのも、どちらも大切ですよね。

 人があまりいない場所を旅するのも大好き。不便さを感じるほどに、普段いかに恵まれた環境にいるのかに改めて気づかされて、自然とまわりへの感謝の気持ちが芽生えていく気がして。さらに、旅ならではのトラブルに直面し、それを乗り越える経験を重ねることで、少しずつ心の強さが養われていくのを感じています。

2025.07.06(日)
文=高田真莉絵
撮影=深野未季
ヘア&メイク=吉田真妃
スタイリング=倉田 強