この記事の連載

 美しく華やかで、おいしいものが彩り豊かに閉じこめられたパフェ。その人気は止まるところを知らず、美しさも味わいも日々磨きがかけられ、進化しています。

 グラスの中で醸し出されるハーモニーは、まさに“parfait”(フランス語で「完璧」の意味)!

 このシリーズでは、今注目の心躍る魅力的なパフェをご紹介します。


今夜はパフェを楽しみに、六本木へ

 まるでスタイリッシュなバーのように、大人のための隠れ家的雰囲気を漂わせるのが、2021年、六本木に誕生した「Patissiere MAYO」です。

 完全予約制で昼間はオープンしておらず、扉が開かれるのは夜6時。仕事帰りやディナーの後に、シェフの宮田真代さんが目の前でつくるデザートやパフェを、お酒とともにカウンターで味わえます。

 レストランでパティシエとして腕をふるった経験から、食事の後のデザートを独立させて、「バーの良さも取り入れて、2軒目や仕事の後のご褒美としてお酒と合わせて楽しんでいただける、今までにないようなお店をつくりたいと考えました」と、宮田さん。

 仕込みから提供まですべて自身で手掛けるばかりでなく、生産者の元へも足を運び、使用する素材を吟味。「生産者の人柄や思い、背景についてもお客様に伝えて、素材が持つおいしさ以上のものを楽しんでいただきたいと思っています」と、話します。

 デザートや焼きたてフィナンシェとともに、メニューに並ぶパフェは常時約2種類。主役となる素材を引き立たせ、アシエット・デセールの感覚でグラスの中に構築された、さまざまな食感や香り、味わいの変化と、重たさを感じさせない後口が魅力的です。

◆マンゴーのパフェ

 5月に登場しているのが、宮崎県産完熟マンゴー「時の雫」を贅沢にも1/3玉以上使用した、「マンゴーのパフェ」です。「時の雫は、マンゴー特有の臭みはなく、甘みも香りも強くて本当においしい」と、宮田さん。

 まずはそのおいしさをシンプルに味わってもらおうと、トップにはフレッシュなマンゴーのスライスとソルベを。ハチミツのチュイルと、独特な弾力感のあるココナッツのくず餅、ミントが食感と風味のアクセントを添えます。

 その下には、酸味がさわやかなパッションフルーツとマンゴーのマリネ、グロゼイユのソース、蕎麦の実を煎って香りをつけたパンナコッタ、ココナッツのクランブル、クレーム・シャンティイが層に。パッションフルーツやココナッツが夏らしさを印象づけます。そして最後は、ライムとジンのゼリーの清々しく鼻に抜ける香りですっきりと。

 「アシエット・デセールは、いろいろな要素が重ねられ、食べる場所によって味が変わります。パフェの中でもそれを表現したくて、真ん中に蕎麦の実のパンナコッタやグロゼイユのソースなど、ひと味異なる味わいを入れました。くず餅の食感も、おもしろみがあって気に入っています」と、宮田さん。

 それでいてひとつひとつの要素を主張させすぎず、心地よい調和と軽やかな食後感を生み出すのも、宮田さんの真骨頂。お酒と合わせていただけば、香りの余韻をさらに膨らみます。

2024.05.14(火)
文=瀬戸理恵子
写真=鈴木七絵