この記事の連載

 強烈な役柄で、インパクトを残す俳優・坂口涼太郎さん。現在、ドラマ「愛の、がっこう。」ではホストの竹千代役を好演中。俳優のほかにもシンガーソングライター、ダンサー、歌人と、多彩な顔を持つ坂口さんが、初めてのエッセイ集『今日も、ちゃ舞台の上でおどる』を出版する。

 ユーモラスな口調ながら、自意識や人間関係、働き方、ジェンダーの問題など、奥深いテーマに向き合った読み応えたっぷりの1冊。

 書くことについて、ご自身について語ってもらった。

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「恥辱プレイです」それでもイケてない自分を書く理由

――初めての著書『今日も、ちゃ舞台の上でおどる』は、webマガジン「ミモレ」で連載されたエッセイをまとめたものです。以前、雑誌のインタビューでは「自分のことを語るのはちょっと恥ずかしい」と話しておられましたが、エッセイを書くにあたり、自分を出すことに抵抗はありませんでしたか?

 今でも自分の話をするのは得意ではないですし、普段から、自分の身に起きたことや悩みを人に話したいとはあまり思わないタイプなんです。それより、人の話を聞く方が好きで、「へー、そうなんや」とインタビュアーになったかのように聞いちゃいます(笑)。

 ですから、オファーをいただかなかったら、自分から本を書こうなんて思わなかったと思います。連載を始めるにあたり、自分が読んで好きなエッセイはどういうものだろうと考えたら、失敗談や恥ずかしい部分も見せてくれるようなものだったんですね。私も自慢話ではなく、失敗してしまったり、自分のイケてない部分を書こうと。読みものとして、それらをいかに面白く書けるかがテーマだなと思いました。

――冒頭から不動産屋さん相手に見栄を張ってしまったり、俳優業の非効率さを語られていて、中盤以降はよくここまで正直に書かれたなと、サービス精神の旺盛さに驚きました。

 本当に恥ずかしいことばかりで、まさに「恥辱プレイ」です(笑)。

――第二幕の子供時代のエピソードは「実録『神童詐欺』の全貌」と題して「文夏砲」と、文春砲を文字って綴っていたり、文体も凝っていますね。

 勝手に拝借して失礼しました! 『週刊文春』を購入して研究したんです(笑)。週刊誌の記事って本当に面白くて、ある議員のパワハラ疑惑の記事でも、いきなり「ヤギ」と対峙するシーンから始まっていたり。なかなか思いつかない、すごいテクニックだなと感銘を受けました。

2025.08.04(月)
文=黒瀬朋子
写真=平松市聖