この記事の連載
◆無花果のパフェ
8月からは、イチジクの魅力を余すことなく落とし込んだ「無花果のパフェ」が登場。「イチジクはキャラメルやスパイスとも相性がいいですが、今回は青みや清涼感のあるイチジクをイメージして、果実の味と香りを最大限に生かしました」と、田中丸さん。
フレッシュなイチジクとチュイルがあしらわれたトップに鎮座するのは、イチジクの葉とヨーグルトのアイスクリームです。そのさわやかなことと言ったら!
「イチジクは、味の主張がおだやかで、表現するのが難しい部分もありますが、葉を使うとイチジクならではの香りと味わいが強烈に出るんです」という言葉通り、口溶けとともに力強いイチジクの香りが押し寄せて、清々しさが口いっぱいに。ハチミツのクレーム・シャンティイがそっと寄り添います。
その下から現れるリンゴのソルベは、アダムとイブのエピソード(リンゴを食べ、イチジクの葉で体を隠し、エデンの園から追放される)にちなんだ、田中丸さんの遊び心。カルバドス(リンゴのブランデー)を造る醸造家によるジンも加えられ、リンゴの果実味がよりクリアに。しゃりっとした食感と清涼感が心地よく喉を通り抜け、フレッシュなイチジクとさわやかにマッチします。
さらに、セミフレッドを思わせるひんやり食感のハチミツとレモンのムースは、角切りにしてイチジクとともに。ハチミツとレモンの香りをまとわせた細かい角切りリンゴのマリネが、シャキシャキとしたアクセントを添えます。
そして、グラスの底から最後に現れるのは、夏らしくさわやかで青みのある香りを放つディルのジュレと、イチジクのソースです。イチジクのソースは、すり潰したイチジクに、イチジクの葉の香りを移した米油と、イチジクのフレッシュな葉を漬け込んだウォッカが加えられ、これがまた、ハッとするほど風味鮮やか。別添えのソースとしてもパフェとともに提供され、途中でかければ、イチジクの香りをググッと増幅させる変化球に。
夏の陽射しと緑あふれるイチジクの庭に立つかのような、みずみずしい夏の香りに包まれて、心も体もリフレッシュしていくのを感じます。
「無花果のパフェ」のペアリングドリンクには、オリジナルのカクテルを。パフェのソースに使われているものと同じく、フレッシュなイチジクの葉を最低5日間漬け込んで、香りを移したウォッカに、ソーテルヌ(甘口の貴腐ワイン)と、トニックウォーターを合わせて、果実の香りたっぷりに。甘やかさがイチジクと同調し、味わいをより一層深くします。
「デザートであれ、チョコレートであれ、目の前にある素材に自分が欲しいと思う味や香りをちょっと加えるだけで十分であり、複雑でテクニカルなことをやる必要はないというのが、僕の考え。和食やカクテルのような感覚ですね」と話す、田中丸さん。
デザートコースが握り寿司とすれば、パフェは海鮮丼だといい、「デザートコースの世界観をぎゅっとひとつにまとめたのがパフェで、お得セットというか、ちょっとずるい食べもの。デザートコースよりもポップでわかりやすく、多くの人に楽しんでいただける食べものだと思っています。そんなパフェを入り口として、『バーはちょっと敷居が高くて入りずらい』という人にもバーの楽しみを知っていただけたら、僕としてはとてもうれしいです」。
ROND-POINT(ロン・ポワン)
所在地 東京都中野区中央2-47-2
電話番号 03-5989-1585
営業時間 <バー>13:00~14:20、14:45~16:05、18:00~19:20、19:30~20:50
日曜は12:30~13:50、14:15~15:35、16:00~17:20
<物販>11:00~19:00
定休日 月曜、不定休
●バーは予約制
Instagram @rondpoint_hirofumi_tanakamaru
名作パフェ図鑑
2024.08.10(土)
文=瀬戸理恵子
写真=鈴木七絵
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