●演劇も映画もアジア圏に広がる作品を作りたい

――そして、3本目となる『そばかす』。主演に三浦透子さんを迎え、前作に引き続いて、恋愛についてどっぷり描いています。

 前作も本作も、自分が恋愛映画を撮っているという感覚はなかったですね。今回は脚本家のアサダアツシさんからいただいた企画ですが、自分なら絶対に作らないような題材とストーリーだなと思いました。

 でも、そのなかで自分が興味のある感情に紐づけられるものが見つけられたことは大きいです。今回の主人公は恋愛をしない女性ですが、たまたま続いただけだと思っています。

――そんな本作は自身にとって、どんな一作となりましたか?

 自分が映画を作ってきた今までの経験などをすべて乗っけることができたので、とても気に入っています。『あの日々の話』と『僕の好きな女の子』があったからこそ、こういう形になったと思いますし。

――今年「玉田企画」は10周年を迎えましたが、演劇人として、映画監督としての将来の目標・展望について教えてください。

 演劇人としては、今年(2022年)の秋にやった舞台「영(ヨン)」が韓国にまつわる作品で韓国人俳優にも参加してもらったので、今後は日本だけでなくアジア圏でも上演できたらと思っています。映画監督としては『あの日々の話』のように、自分の舞台を映画化する純度の高い作品を撮りたいです。また、『そばかす』のように自分が思いつかない視点で書かれた脚本の作品も手掛けたい。自分にとって、とても刺激になりましたから。演劇同様に、アジア圏に広がる作品を撮っていきたいです。

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玉田真也(たまだ・しんや)

1986年生まれ。石川県出身。劇団「青年団」演出部に所属する一方、2012年に旗揚げした自身主宰の劇団「玉田企画」の全作品の作・演出を担当。19年公開の『あの日々の話』で映画監督デビューするほか、同年に脚本を担当したドラマ「JOKER×FACE」では「第8回市川森一脚本賞」を受賞。

映画『そばかす』

12月16日(金)より新宿武蔵野館ほか全国公開中。

物心ついた頃から恋愛がよくわからず、恋愛感情が湧かない自分に不安を覚えながらマイペースに生きてきた佳純(三浦透子)。地元のコールセンターで働く彼女は、妹が結婚・妊娠したことで、母からプレッシャーをかけられ、無断でお見合いまでセッティングされた。だが、そこで彼女が出会ったのは、結婚より友だち付き合いを望む男性だった。
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Column

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2022.12.23(金)
文=くれい響
写真=鈴木七絵