読んで、観て、聴いて、食べて、笑って、旅して、泣いて……。一日一日の積み重ねた経験が地層のように折り重なってできる「私」。

 「あの人のアタマの中身を覗いてみたい!」そんな今いちばん気になる人がどういう人生を歩んで出来上がったのか。CREAが成分分析を敢行します。第一回は劇作家、演出家、映画監督の玉田真也です。

玉田真也

1986 年生まれ、石川県出身。大学在学中に演劇を始める。大学卒業後、2011 年に青年団演出部入団。2012 年、劇団「玉田企画」を旗揚げし、以降すべての作品で脚本・演出を担当。2019年『あの日々の話』で長編映画監督デビュー。2020年、テレビドラマ『JOKER×FACE』(フジテレビ)の脚本で第8回市川森一脚本賞受賞するなど活躍の場を広げる。新作監督映画『そばかす』が2022年12月16日(金)より公開されている。


“何事かがその場で起きている感覚”を大切に、常に何かが起きている演劇をつくる

 2022年、自らが主宰する劇団「玉田企画」が10周年を迎えた玉田真也。毎年公演される劇団の本公演の他、ユーロライブで行われるテアトロコントの企画や演出をするだけでなく、近年ではドラマや映画にも活動の場を広げている。12月16日(木)から公開されている『そばかす』は三浦透子の長編映画単独初主演となり注目を集めている。

『bananaman live S』バナナマン

 玉田企画の作品で重要な要素を担っているものが「笑い」。一見普通の日常に見える世界の中で起きるちょっとしたズレ。そうした関係性の中で立ち上がる笑いをしっかりと掬いあげるのが玉田真也の真骨頂だ。

「演劇の脚本を書くにあたって、一番影響を受けたと言っていいのがバナナマンのコントライブですね。中学生ぐらいの時から見始めたのですが、地元のTSUTAYAにあるDVDはそれこそもう全部見ましたね。毎年1本は新作が出るのですが、いつも心待ちにしていました。設楽さんと日村さんの二人の間で、何事かが起きて、展開していく。その空気に飲まれるというか、起きていることから目が離せなくなる」

 夢中になった玉田は何度も何度もDVDを見ることで、コントの呼吸を自然に学びとっていたという。

「“何事かがその場で起きている感覚”っていうんでしょうか。物事が起こるきっかけを感覚として受け取りました。脚本を書き始めた当時は、バナナマンさんのコントのノリを参考にして書いていましたね。話の中身は全然違っても、その“何事かがその場で起きている感覚”をトレースして作品に落とし込んでいた」

2022.12.19(月)
文=CREA編集部
撮影=山元茂樹