「香港映画祭2024 Making Waves - Navigators of Hong Kong Cinema 香港映画の新しい力」で公式初来日したフィリップ・ン。これまでは知る人ぞ知るアクション俳優だった彼が、“愛される悪役”を演じた香港No.1ヒット作『トワイライト・ウォリアーズ 決戦!九龍城砦』でブレイクするまでのキャリアを振り返ってくれました。
教師の道から、憧れの香港映画界に飛び込む
――幼い頃から、詠春拳や蔡李佛拳といった中国武術を習われていたフィリップさんですが、幼い頃の夢は?
私は蔡李佛拳の継承者である父親だけでなく、2人の叔父も中国武術の先生という家庭環境で育ちました。そして、やんちゃな性格だったこともあり、渡米した7歳から武道を学びました。
その頃は特に大きな夢はありませんでしたが、13歳のときに同級生にいきなり殴られ、倒されてしまったんです。そのとき、「自分は今まで何を学んでいたんだ?」と疑問を感じ、真面目に武道を学び、それを極めて、立派な武道家になろうと思いました。
――アクション俳優を目指したのは?
アメリカではシカゴに住んでいて、これといった娯楽がありませんでした。そんなとき、両親がチャイナタウンでジャッキー・チェンさんの『ドランク・モンキー/酔拳』のビデオを借りてきたんです。それを観たときの衝撃はかなりのもので、「ジャッキー、カッコいい!」「香港映画、スゴい!」と思い始め、アクション俳優に憧れを抱くようになりました。
――とはいえ、大学卒業後にはグラフィックデザインや教育学を学び、教育免許も取得されます。でも、夢を諦められず、24歳のときに一念発起して、香港映画界に飛び込まれます。
とても教育熱心だった両親に対し、長年「アクション俳優になりたい!」とは言えませんでした。ある日、両親に告白したところ「万が一、アクション俳優の道が上手くいかなかったら、教師をやればいいだけ」と、背中を押してくれたんです。
それで香港に戻り、チン・カーロウさんが率いるスタントマンチーム「錢家班」のメンバーになりました。それから間もなく、『ツインズ・エフェクト』(02年)のオーディションで端役のヴァンパイア役に選ばれました。そして、早くも憧れのジャッキー・チェンさんと共演することができたのですが、そのオーディションに立ち会っていたアクションチームの一人が、その後、何度もお世話になる谷垣健治さんでした。
健治さんは今でもそのときの映像を持っているようで、冗談で「現場で言うこと聞かないと、オーディションのときの恥ずかしい映像を晒すぞ!」と言ってくるんですよ(笑)。
2024.11.29(金)
文=くれい響
写真=三宅史郎