穏やかな笑顔とメガネ姿で、さまざまな映画やドラマに出演してきた矢柴俊博。良き父親から陰湿な悪役までこなす、名バイプレイヤーである彼が、初の主演映画『本を綴る』公開を機に、自身のキャリアを振り返ってもらいました。


裏方志望から始まった俳優人生

――幼い頃の夢は?

 学校の先生になりたかったです。当時流行していた「熱中時代」「3年B組金八先生」といった学園ドラマの影響もありましたし、その後にお世話になった中学校の先生の影響も大きかったですね。

――そこから、俳優を目指すようになったきっかけは?

 その後も、いろんなドラマを見るようになって、「北の国から」や「ふぞろいの林檎たち」の再放送を見たのがきっかけで、まずは脚本に興味を持つようになりました。それで「ふぞろい~」の脚本家だった山田太一さんのシナリオ本を読んだりして、山田さんにはファンレターも出しました。

 その後、高校生になると、銀座の映画館で映画をたくさん観るようになって、ジム・ジャームッシュのような監督にも憧れるようになりました。

――早稲田大学に入学し、演劇サークルに入られますが、そのときも脚本や演出をやられていたのですか?

 1年生のときは、脚本・演出をやっていました。それがだんだんペンを使って世界を表現したり、台本片手に誰かに指示するというより、「自分の身体を使って、直接演じた方が得意だ」ということに気付き始めました。

 その延長として、パントマイムについても勉強しました。演劇をやっている頃は演技をすることで、お金をもらえるなんてことはまったく考えられませんでしたね。小屋(劇場)を借りるなり、美術を作るなり、自分が出費するのが当然のことでしたから。

2024.10.11(金)
文=くれい 響
撮影=深野未季