「脇役ファンタジスタ」を自称する理由
――南部康雄を演じられた『SPACE BATTLESHIP ヤマト』など、山崎貴監督の作品にも出演されています。
山崎監督も僕がワークショップに参加したことで、起用していただきました。きっちり練られた現場のスケジュールと、ストレスなく過ごせる快適なバックアップ体制、あと監督の明確なビジョンなど、当時からハリウッドに負けない大作の制作体制を作られていました。「ここに、ずっといられたら幸せだな」と思うような凄い現場でしたし、「役者を続けていてよかったな」と思いましたね。
――そんななか、かつて自ら「脇役ファンタジスタ」のキャッチコピーを付けられていた理由を教えてください。
自分には秀でた武器がないと思っていたので、個人で勝負するには多重性を演じ切るしかないんじゃないかと思っていました。だから、演じる役がいい人だろうが、悪い人だろうが、とにかくなりきる。それが僕にとっての生きる術だったんです。だから、それを逆手に取って「ファンタジスタ」と言ってしまおうと。今でも、善人役と悪人役の出演オファーは、半分半分ですね(笑)。
――そして今回、初の主演映画である『本を綴る』。22年配信されたYouTubeドラマ「本を贈る」に登場した(新作を)書けない作家・一ノ関哲弘をふたたび演じられました。
「本を贈る」と同じ、篠原哲雄監督による作品ですが、ドラマを撮っているときは映画の話は決まっていませんした。その後、制作が決まり、お話をいただいたのですが、前は脇役だった一ノ関が主人公になっていましたが、僕の中ではスピンオフだという捉え方をしていました。そう思うことで、主演映画としての責任みたいなものから逃げようと思っていたんでしょうね。何度も声をかけてくださっている篠原監督の現場は本当に楽しいですし、一ノ関は真面目な物書きというよりは、ちょっととぼけたところもある感じなので、衝動に従いなから、アドリブを出したりして、気楽に演じることができました。
2024.10.11(金)
文=くれい 響
撮影=深野未季