劇団「贅沢貧乏」主宰の山田由梨さんがエッセイ集『ぜんぜんダメでパーフェクトなわたしたち』で綴ったのは、「うつ」や「冬季うつ」を経験したからこそ見えてきた、休むことや無理に生産しないことを肯定するまなざしです。山田さんが考える“理想の休み方”、そしてエッセイを書くことの効用についてお話を聞きました。

とにかくみんなエッセイを書いたほうがいい!

――『ぜんぜんダメでパーフェクトなわたしたち』は、29歳でうつになり、30歳から毎年冬季うつになる体験を綴ったエッセイです。冬季うつの実感を言葉にするのは「勇気がいることであった」とお書きになっていますね。

 2024年にうつについて触れた演劇作品(『おわるのをまっている』)を制作したのが第一段階。この本では、もうちょっと自分の素の部分や普段の生活のあり方を書きました。ただ、こうやって体調が悪いことを書いたり発表したりすると、「できることもできないと思われてしまうんじゃないか」という心配がどうしてもあって。体調って日々変化するし、流動的なものですよね。でも「冬季うつです」って言った瞬間に、私という人間が「冬季うつの人」として一気に塗りつぶされてしまうような感じがしていて。自分の不調を世の中に発信するときに、こうした「塗りつぶされてしまう」ことへの不安はきっと私だけでなく、多くの人が感じているものなんじゃないかな、と思いました。

――本書は山田さん初のご著書なんですね。

 そうなんです。SNSと違って、本はじっくり時間をかけて読んでもらえるから、細かい実感を綴れる媒体だと思っていて。私が感じていることを、読者のみなさんはそれぞれのペースで向き合ってくれるのかなって。読んでくださったみなさんとは、その生活の細かい実感を共有できたら嬉しいです。本というスローな媒体だからこそ書けたこともたくさんあります。

――書くことによって気づいたことなどはありますか?

 気づくというよりは、書くことで自分という存在を切り離してじっくり眺められるようになったという感覚かも。今回の執筆は一切悩まず「一気書き」なんです。もともと自分の状態を分析する言葉が自分の中に溢れていたので、それをただただ取り出していく作業でした。ずっと考えていたからこそ近すぎて曖昧だったことも、外に出したことでよりクリアになりました。友達と話すと自分の気持ちがはっきりしてくることがありますよね。それと似ていて、書くことで自分の状況がよくわかる感覚がありました。

――書くことはセラピーにつながる。本書にも書かれていますね。

 そうなんです! 本当に、みんなエッセイを書いた方がいいと思います。このインタビューの見出しを「みんなエッセイを書いたほうがいい」とかにしてもらいたいくらい(笑)。この本を出してから、友達が初めてエッセイを書いてLINEで送ってくれたんですが、どれもめちゃくちゃ面白くて。

――まずはどんなことから書いてみるのがいいですか?

 どんなことでもいいんです。もやもやしていることとか、ちょっと嫌なことがあったけど自分でもなんでそんなにひっかかっているのかわからないこととか……。たまっていることを書いてみてほしい。エッセイってネガティブな方が読みどころがあるじゃないですか。「楽しいごはん会だったね」みたいな内容なんて、正直つまんないですし(笑)。自分の中で消化できずもやもやしていた出来事も、エッセイとして書いているうちに明確になってくるし、あとで自分で読み返してみて「おもろ!」って感じられたら昇華されるはずです。

 それに書くことって自分を好きになる行為でもあるなと思っていて。「もやもやしている自分もおもしろい」とか「こういうところにひっかかる自分が愛しいな」みたいに思えたら最高です。友達にもこんなふうに力説しています。書き続けるのは難しいかもしれませんが、1本くらいならきっと誰でも書けるはず。ぜひ試してみてほしいです。

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