NHK朝ドラ「舞い上がれ!」(2022年)で、お調子者のパイロット候補生・水島役を演じ、一躍注目を浴びた佐野弘樹。2018年から6年がかりで製作し、主人公を演じた映画『SUPER HAPPY FOREVER』が現在公開中の彼が自身にとって大きな財産となった貴重な体験を振り返る。


バイト先の先輩に誘われ、演技の世界へ

――幼い頃の夢は?

 一番最初は、ピカチュウというか、ポケモンになりたいと言っていたと思います(笑)。その後、小学3年生のときに友だちの誘いで、サッカーを始めて、「プロサッカー選手になりたい」と思うようになったのですが、6年生の時にギリギリ県選抜に行けなくて、「プロになるための壁が高すぎる」と半ば諦めてしまいました。それでも高校卒業まで、サッカーを続けていました。

――その後、上京して大学生のときには、モデル活動をされていたそうですね。

 原宿界隈を歩いていたとき、美容師の人や雑誌の編集部の人に声をかけていただき、読者モデルのようなことをやっていましたが、特に事務所には入っていませんでした。

 それで大学3年で就活を始めようと思ったとき、当時バイトしていたカフェの先輩から「舞台(演劇)をやるから、興味あれば、一緒にやらないか?」と誘われたのを機に、芝居を始めることになりました。

――それまで、お芝居をしたことはなかったんですよね?

 「これで就職しなくていい」程度の軽い気持ちで、いきなり小劇場の世界に飛び込んだので、右も左もわからなくて……。とにかく滑舌の発声法から始めて、演出家の言うことを聞いて、いろいろやりました。

 そのうち、演技の面白さみたいなものに気付き始めて、「声をかけてもらえるかぎり、この2年間はこの環境に身を置こう」と思うようになりました。それで6~7本ぐらい舞台に出たのですが、「事務所に所属して、マネジメントしてもらわないと、映像の仕事に出るのは難しいかも……」ということが分かったんです。

 それで、雑誌「デビュー」と「映画24区」とのコラボよるワークショップオーディションを受け、今の事務所に入ることになりました。

2024.10.25(金)
文=くれい響
写真=平松市聖