ブルース・リーを演じたときのプレッシャー
――アメリカ映画『バース・オブ・ザ・ドラゴン』(16年)では、若きブルース・リーを演じました。詠春拳の師でもある伝説の人物を演じるプレッシャーはありましたか?
ドラマ「城寨英雄」(日本未公開・15年)に出演しているとき、アンディ・オンの自宅で僕のプロモーションビデオをじっくり撮り、アメリカの会社に送ったことを覚えています。それを気に入ってもらえて抜擢されたのですが、それから「誰もが知っている伝説の人物を演じるなんて!」と、かなりのプレッシャーを感じました。
その後、できるだけ彼についてリサーチし、理解を深め、「もしブルース・リーが、この状況に立ったら、どんな反応をするか?」ということを念頭に置いて演じました。アクション監督のコーリー・ユンさんにも、いろいろ助けてもらいました。
――そして、『トワイライト・ウォリアーズ 決戦!九龍城砦』(24年)では最強のラスボス・王九(ウォンガウ)役を怪演されます。見た目のインパクトに加え、谷垣健治アクション監督による無敵すぎる強さもあり、悪役ながら、子どもや女性からも愛される人気キャラとなりました。どのような役作りをされたのでしょうか?
王九のキャラ造形としては、長髪で、ヒゲをたくわえ、大きめのサングラスをかけているという3点セットがあります。それを身に着けたとき、周りのスタッフから「観客は王九を演じているのが、フィリップだと分からないよ」と言われ、とてもワクワクしました。健治さんたちのアイデアから気功の使い手として、さまざまなアクションにも挑戦しました。
さらにソイ・チェン監督からは「キャラがより映えるために、他人とは違う特徴的な笑い方をしてほしい」という要求がありました。いろんな笑い方を研究したのですが、正直クランクインしたときには、明確な答えを出すことができませんでした。
――その後、どのタイミングで答えを見つけ出すことができたのでしょうか?
その翌日に、道具箱の中から武器を選ぶという、大ボス役のサモ・ハンさんとのシーンがありました。そのとき、子どもがおもちゃを選ぶようにキャッキャッして、武器を選んでいたら、現場のスタッフがバカ受けしていたんです。そのとき、「この方向性で行ける!」と、笑い方に確信が持てました。控えめにやってもダメだし、オーバーにやりすぎてもダメ。そのさじ加減はとても難しかったですが、監督を信じてやって本当に良かったと思います。
ちなみに、このシーンは当初カットされてしまったのですが、香港で大ヒットしたことで、エンドロール後の「特別映像」として復活したんです。日本でも大ヒットして、このヴァージョンも上映してほしいですね(笑)。
2024.11.29(金)
文=くれい響
写真=三宅史郎