大会の初日には「基調講演」で自然を学ぶ――琵琶湖をめぐる命のつながり

今回の「びわ湖 東近江 SEA TO SUMMIT®」は、2日間にわたって開催され、アクティビティ前の初日には、特別講演が行われた。
今回、登壇されたのは、琵琶湖博物館の特別研究員・藤岡康弘先生。講演のテーマは、「琵琶湖水系を回遊する生き物たち ~固有種が育む豊かな食文化~」だった。
琵琶湖にしかいない固有種――例えば、ビワマスやニゴロブナといった魚は、川と湖を行き来する「回遊魚」でもある。藤岡先生は、長年の研究をもとに、これらの生き物がどのような生態をもち、なぜ琵琶湖という環境でしか生きられないのかを熱く語られた。
とくに印象的だったのは、魚たちの回遊がもたらす「文化的価値」への言及だった。郷土料理「ふなずし」には、固有種のニゴロブナが欠かせない。漁獲から発酵、熟成までには1年以上かかることもあり、その背景には、自然と人間の知恵の深いつながりがある。
「固有種を守ることは、食文化を守ること。つまり、私たちの暮らしや地域のアイデンティティを守ることなんです」
そんな先生の言葉が、参加者の胸に深く刻まれた。
このイベントが、単なるアウトドア体験にとどまらず、「環境を考える機会」として設計されていることを、改めて実感した一日だった。
「SEA TO SUMMIT®」

2025.08.24(日)
文・写真=CREA編集部