映画『愚か者の身分』で、北村匠海さん演じるタクヤの弟分・マモルを演じた林裕太さん。撮影現場では北村さんの存在に支えられながら、まるで兄弟のような時間を過ごしたそう。そんな林さんに、作品への思いと役に向き合った日々を聞きました。


役作りのために、歌舞伎町に初めて足を踏み入れた

――映画『愚か者の身分』は、環境に押し流されるように闇バイトの世界に足を踏み入れざるをえなかった若者、そして若者を取り巻く貧困の現実に真正面から向き合った作品です。この物語と出合ったとき、まずどんなことを感じられましたか?

 まず、物語としてすごく面白かったです。疾走感、緊張感、次に何が起こるかわからないドキドキ感もあり。台本を読む手が止まりませんでした。エンターテインメントの中に、生きていくために人はどうしたらいいのか、という大きなテーマがしっかり感じられる映画だと思います。男くさい絆だとか、愛といったものもきちんと描かれていますよね。「この世界で生きてみたい」と思いました。

――男くさい絆は、林さんご自身の身近にもありますか?

 あまりないかもしれないです。中学時代の陸上部の友達とは、今もずっと仲良くしているんですが、義理とか人情みたいな雰囲気はなく、気楽な関係です。長く一緒にいるからこそ分かり合える仲にはなっていると思います。自分のまわりにはないからこそ、新鮮でしたし、この世界に入ってみたいと感じたんだと思います。

――オーディションでつかんだ、マモルという役をどのように理解しましたか? 複雑な環境で育った人物ですよね。

 マモルを演じるにあたり、大切になってくるのは回想シーンだと思っていて。回想シーンには、彼がどういう家庭で育ったのか、そしてそのことによりどのような感情の変化が生まれたのか、という背景になるものがしっかり描かれているので。そこをしっかり読み込んでから、身のこなし方や話し方などを組み立てていきました。

 それに、闇バイトのニュースを読んだり、関連する本を読んだり、そして歌舞伎町に実際に足を運んでうろうろしてみたり。

――普段は、あまり歌舞伎町には行かない?

 この役を演じることが決まるまで全く行ったことなかったです! 本当に初めてだったので、めっちゃドキドキしました。

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