匠海くんは頼れる先輩であり、兄のような存在

――大学では演劇を学び、在学中にデビューされています。デビュー当時と比べ、芝居へのアプローチに変化はありますか?

 台本に書かれていない背景に思いを巡らせて、そこに至るまでの経緯を考えて役作りをする、というのはデビュー当時から変わっていないんですが、昔はもっと頭でっかちでした。役の背景を丸ごと背負わないといけないと思い込んでいて。それで体がかたくなってしまって、演出に対して柔軟に対応できないことも。

 今でも、まだまだ自分がきちんと演技をできているという自信はないんですが、思い込みを手放せるようにはなってきています。現場で起こることを一番大切にできるようになってきたのかな、と。指摘されたことに対応しながら、自分のやりたいことも組み込んでいけるようになっていっていると嬉しいです。

――今回は、主演の北村匠海さんと一緒の撮影が多かったと思います。北村さんとのやりとりをきっかけに生まれたものはありますか?

 むしろ、それしかないです。匠海くんがいてくれたからこそ生まれた感情や演技も色々あります。自分でもある程度演技プランは作ってから撮影に臨むのですが、匠海君はそれ以上のものを引き出してくれる。

――北村さんは実際にアドバイスもしてくれたのでしょうか?

 具体的に言葉で伝えてくれるわけではないんですが、「もっと来いよ! 来てくれたらもっと面白がるから」みたいな感じで、すべてを受け止めてくれていました。とにかく懐が深いんです! 匠海くんがそのようにどんと構えていてくれたから、どんどん僕の演技も良い方向に変わっていけました。

――頼れる先輩ですね。

 歌舞伎町での撮影中、待ち時間がすごく長い日があったんです。しかも雨が降っていたので、二人でずっと待ち続けていて。そのとき特におしゃべりをするわけでもなく、ただ同じゲームを並んで淡々とやっていたんですね。そんな時間の中で、ちょっと兄弟のような雰囲気を感じました。プライベートな一面を垣間見られたことで、ぐっと距離が近づいた気がします。匠海君は頼れる先輩でありながら、お兄ちゃんのようでもありますね。

» 【続きを読む】「ストイックに食事制限と筋トレをしていたけど…」林裕太が映画『愚か者の身分』で気づいた自分の“人間らしさ”

林裕太(はやし・ゆうた)

2000年11月2日生まれ、東京都出身。20年に俳優デビュー。22年「間借り屋の恋」で映画初主演。2026年前期NHK連続テレビ小説「風、薫る」にも出演予定。

映画『愚か者の身分』

2025年10月24日(金)全国公開
出演:北村匠海、林裕太、山下美月、矢本悠馬、木南晴夏、綾野剛ほか
©︎2025 映画『愚か者の身分」製作委員会​
https://orokamono-movie.jp/

あらすじ

SNSで女性を装い、言葉巧みに身寄りのない男性たち相手に個人情報を引き出し、戸籍売買を行うタクヤ(北村匠海)とマモル(林裕太)。タクヤは闇ビジネスの世界に入るきっかけとなった梶谷(綾野剛)の手を借り、この世界から抜け出そうとするが……。