映画『愚か者の身分』で北村匠海さんの弟分・マモルを演じた林裕太さん。「愚か者」という言葉の裏にある、人間の弱さや温かさをどんなふうに受け止めたのか。撮影現場でのエピソードから、今の自分を支える「誰かのために生きる」という思いまでを語ってくれました。

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大きな目標なんてなくていい。誰かのために生きることがパワーに

――『愚か者の身分』というタイトルには強い響きがありますが、どんな印象を受けましたか?

 当事者たちは、自分たちのことを全く愚か者だとは思っていなくて。無我夢中で懸命に生きているだけだというスタンスだと思います。じゃあ、なぜ愚か者になってしまうのかというと、こうするしか生きる方法がないから、そして他の選択肢を知らないからですよね。他者から見たら「愚か者」だけど、本人たちは今の生活を喜んでしているわけではない、ということはこの映画のテーマを理解するうえでとても大切だと思っています。

――そうですよね。生きていける環境があれば、彼らだって闇バイトには手を出さないですよね。

 はい。闇バイトという選択肢を選んでしまった彼らの生き様を映し出している映画だと思います。

 僕らみたいな若い世代って、大きな目標や、成し遂げたいことが見つけられないと「自分の人生ってろくでもないんじゃないか」って思い悩んでしまう人が多いんじゃないかなと感じていて。実際に、僕もそのように考えてしまう時期はあったので。でも、やりたいことがないからといって、その人生が悪いとは限りませんよね。誰かのためにほんの小さなことでもやり遂げられたら、それだけで生きていく意味になると思います。

 この映画からは、誰かのために生きることで得られるパワーって必ずあるんだよ、ということを感じ取ってもらえたら嬉しいです。

――林さんは、これまでに誰かのために生きたいと感じたことはありますか?

 僕はその気持ちが強いタイプだと思います。この世界に入って、役者として頑張りたいと思えるようになったのは、自分の演技を評価してくれる人だったり、大事な役を僕に任せてくれた人がいるからなので。今は、応援してくれている人たちが一番の原動力になっています。

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