芸能界入りから10年を経たずして、主演ドラマが話題を呼ぶなど、目を見張る活躍が話題の俳優・杉野遥亮さん。
インタビュー後篇では2024年6月7日(金)全国公開の映画『風の奏の君へ』での役作りや映画の見どころなどに加えて、ご自身のお仕事に対するスタンス、そしてこれからの目標などについてお伺いしました。
どんなときも「自分らしく」。「幸せ」という感情で一日を終えたい
——シリアスな役柄からコメディまで幅広く演じられていますが、これから先のキャリアで目指しているものはありますか。
俳優という仕事は難しいと思います。ひとりで自分自身と向き合うという職業でもありますが、俳優はいろんな考え方の人がいる中で「自分がどうあるか」ということだったりするので、それは難しいと思うことが多々あります。人と意見もぶつかることもありますし、なかなか思う通りにいかなくて、悔しく思うこともあります。
そんな中で自分が自分らしく、どういられるかというのは鍛えられます。みんなでモノを作ることは醍醐味だったりもしますし、人間として成長できる場所にいて、そういう機会を与えられていると思います。
——役を生きるというのはまったく違う人生を歩むことで、そこに対しての面白さはどうですか?
すべてを面白い、とは僕は思ってないんです。難しいこともたくさんありますし、それこそ100%楽しいと思えるところにはいけないと思いますが、魅力を感じているのは確かです。
ああだこうだ言いながらモノを作る中でみんなが同じ方向を向けた瞬間やひとつになれた瞬間は、自分の中では“喜び”だと思っています。
——俳優として、「こうなりたい」という理想や目標はありますか?
どんなときも自分らしくいられるように。良くも悪くも、どうしても人に気を遣ってしまう場面もありますし、自分の軸がぶれる瞬間もあるわけで。そんな中でも、自分という人を信じて好きでいられることができたら、毎日なんて楽しいんだろうと思うんです。
毎日、「もっとこうしていればよかった」と思うのは時間のムダだと思うんです。それよりも「今日は楽しかったな。寝よう」という感じで一日を終わることができたら幸せだと思うんです。
目の前のことを誠実にやり遂げれば、きっと結果はついてくる
——すごくお忙しいと思うのですが、オンとオフとの切り替えはどのようにされていますか?
あまり器用なタイプではないんです。オンオフの切り替えを意識してやっているかというとそうでもないですし、僕も勉強中という感じです。
作品に入っているときは、実は“切り替え”が出来てないのかもしれません。今後、学んでいくんだと思います。こうあるべきというやり方を追い求めるというよりは、気付いたら、自然に切り替えているというのが近いのかもしれません。
連続ドラマに入る機会が多いと、毎日どこかスケジュールに追われてしまうところもあるので、そうなってくると家に帰っても、仕事のことを考えてしまいますし。
——CREAの読者はほぼ杉野さんと同世代ですが、仕事に対する考え方や自分の悩みとの向き合い方など、読者に対して何かアドバイスをいただけますか?
まず、自分がそういうアドバイスをできる立場か否かというのは置いておいてですが(笑)。自分もそういうことで悩んでいます。もちろん解決に向かって動かないといけないですし、やれることはやらなくてはいけないと思います。最低限、自分の目の前にあることを一生懸命頑張ったうえでなら、悩んでいても、解決しなくていいんじゃないと思うんです。
目の前のことに誠実に向き合ったり、一生懸命やっているのであれば、きっとやがて解決すると今は思うようにしています。
例えば、ある仕事をやっていて、ものすごく前向きに誠実に頑張っているけれど、ある日リストラに遭いましたと。そこだけ見たら、すごく悪いことのように思うかもしれないですが、自分の時間が出来て、その後見つかった転職先が自分にとっては天職だったとか、実はこっちのほうが心地よかったとか、そういうことってあると思うんです。
だからこそ、目の前のことに必死に向き合うのが一番だと思います。
2024.06.07(金)
文=前田美保
撮影=深野未季
ヘアメイク=亀田雅
スタイリスト=伊藤省吾