時に、立ち止まることは必要。エンジン掛けっぱなしは疲弊します!
——もうすぐ30歳を迎えられると思いますが、“30歳の壁”みたいなものは意識されますか?
あまりないですね、そういうの。冗談で「俺、アラサーなんですよ」なんて言ったりしますが、正直あまり考えてなくて、年齢はただの数字と捉えています。
——30歳を超えたら、周囲の方からの見方も変わってきそうですか?
自分がキャリアを積むにつれて主演をやらせていただく機会も増えましたし、周りの人が「杉野さん、杉野さん」って言ってくださることも増えたと思いますが、僕としてはあまり変わってないんです。中身は小学生のままの部分もありますし(笑)。
でも、しっかりしている部分もちゃんと培ってきているつもりですし、それは周りの人がどうかというよりも、自分がどう思うかだと思います。自分は成長しているつもりでも、あいつはダメだって言う人もきっといるでしょうし(笑)。
——映画『風の奏の君へ』で演じている渓哉はさまざまな出来事、いろんな感情を経て、次のステップへと向かいます。杉野さんご自身のキャリアや人生で、転機になった出来事や出会い、ターニングポイントがありましたか?
プライベートではありますけど、あんまり言いたくないです(笑)。でも、僕、仕事ではその都度その都度、必要な人に会っている気がするんです。そのときの自分に足りないと思っている、カッコいいなと思っている人、素敵だなと思っている人にお会いしていると思います。ある意味“引っ張ってくれる人”という感じですかね。
例えば、『ハケンの品格』では大泉洋さんにお会いして、素敵だと思いましたし、『教場II』でご一緒した木村拓哉さん、舞台『夜への長い旅路』でご一緒した大竹しのぶさん……。いろんな方をたくさん見てきて、それを糧に、ここからは自分で歩いていく時期かなと思っています。
以前は「この人みたいになりたい」と、あちこちフラフラしていました。それと自分とのギャップ、「そういうふうにはなれないんだよ」と改めて自覚したりしていました。いま、ちょうど4カ月作品に入ってなかったので、その間、いろんな方との出会いを自分の中に落とし込んでいるうちに、徐々に「自分は自分」と思い始めているんです。今はまさに、そういう時期です。これまで素敵な人をたくさん見てきました。今は自分は自分なりに生きていこう、という感じです。
——杉野さんの“自分らしさ”とはどんなものですか?
僕、本当はすごく優しくて温かい人なんだということに、この前気付いたんです(笑)。でも、それは別に知られてなくてもいいです。そういうことよりも自分自身が、「自分はこういう人間なんだ」と分かったことが重要だと思うんです。それも4カ月ゆっくりと過ごす時間があったからこそ、なんですけどね。
——では、ゆっくりと過ごした時期も含めて、杉野さん自身が一歩次のターンへ進んだという感じでしょうか?
立ち止まることは、すごく大事だと思います。それも前進への“何か”だと思うので。その時間は苦しいけど、自分と向き合わないといけません。エンジンを掛けっぱなしでいると絶対にいつかガソリンが切れてしまうんです。それをチャージする時間が必要だと思います。
もちろん、立ち止まることで焦りや不安が生まれるとは思いますが、それすらも“次への何か”ですから。大きな目で見ると問題ないと思います。立ち止まりながら、進んでいきたいと思います。
杉野遥亮
1995年9月18日生まれ、千葉県出身。2015年に第12回FINEBOYS専属モデルオーディションでグランプリを獲得し、芸能界入り。2017年の映画『キセキ ―あの日のソビト―』で俳優デビュー。映画『リベンジャーズ』シリーズや2023年ドラマ『ばらかもん』など主演作も多数。公開待機作に映画『風の奏の君へ』のほか、『磯部磯兵衛物語~浮世はつらいよ~』(2024年7月予定 WOWOW) 、『マウンテンドクター』(2024年7月予定 フジテレビ系)がある。
映画『風の奏の君へ』
2024年6月7日(金)公開
お茶の名産地である岡山県美作地域を舞台に、この地を訪れたピアニスト・⻘江里香と、茶葉屋を営む兄弟をめぐる物語。
https://kazenokanade-movie.jp/#modal
衣装クレジット
ジャケット 135,520円、Tシャツ 42,900円、パンツ 75,900円/以上マラン(イザベル マラン 青山店 03-6427-3443)シューズ 115,500円/セルジオ ロッシ(セルジオ ロッシ カスタマーサービス 0570-016600)他スタイリスト私物
2024.06.07(金)
文=前田美保
撮影=深野未季
ヘアメイク=亀田雅
スタイリスト=伊藤省吾