夜な夜なマンガに夢中になる大人が急増する中、2022年に誕生した「CREA夜ふかしマンガ大賞」。眠りにつく前の自分だけのひとときに、ページをめくりながら癒され、息を呑み、泣いて笑って──。第4回となる今年も、日常のあれこれを忘れさせ、新しい世界に連れ出してくれる名作が揃いました!

 今回は、マンガ家さんと二人三脚で数々の名作・ヒット作を生み出してきたマンガ編集者の方々に選考委員を務めていただきました。「夜ふかしマンガ大賞に推薦する作品」「人生で思わず夜ふかしして読んだ作品」「マンガを読むときのマイルール」など、マンガ好き必読のアンケートです。


豊田夢太郎さんが「夜ふかしマンガ大賞に推薦するマンガ」

◆『おかえり水平線』渡部大羊/集英社

 高校生の柿内遼馬は、海辺の小さな街で銭湯を営む祖父と二人で暮らしている。ある日、亡き父の隠し子を名乗る少年が訪ねてきて――。

「第1話が始まるずっと前からこの世界に登場人物たちが『生きて』いて、読者である自分はその生活の中のわずかな期間をのぞかせてもらっている、という気持ちになりました。そして、もっと先までどこまでも彼らのことを見守りたくなります。それくらい、キャラクター全員が魅力的な作品でした。あそこに住んで、常連のじじいの一人になりたい」

◆『邪神の弁当屋さん』イシコ/講談社

「極めて簡素な筆致で、でも底知れぬ謎がそこにはあるという、これは多くの漫画(家)が目指す『間口は広く、奥は深い』作品の理想型の一つだと思います。語り方のテンポは内容の重さと裏腹に一貫して軽いところも素敵でした」

◆『怪獣を解剖する』サイトウマド/KADOKAWA

「作り込まれた設定のSF作品である一方で、物語はしっかりとキャラクターたちの感情で駆動するので(「事件」や「謎」だけが物語を動かしているわけではない)、 ひとつひとつの表情や言葉が刺さるし、何より読後感が心地よかったです。上下巻という、潔さすら感じる長さもちょうどいい」

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