
まるでSF映画やアニメに登場しそうな奇想天外さでありながら、周囲の自然に溶け込むあたたかみも感じる建築物。このオンリーワンの建築を手がけているのは、現在東京大学名誉教授や江戸東京博物館館長などを務めている、建築家・藤森照信氏です。
長野県茅野市高部地区は、藤森氏の出身地。周辺には彼が設計したインパクト抜群の建築物が多数点在。藤森建築を巡るには、絶好の場所なのです。
どんな建築物を見ることができるのでしょうか?
» 1_藤森照信のデビュー建築
» 2_空中に浮かぶ茶室!? 「空飛ぶ泥舟」
» 3_本当に低過ぎる「低過庵」
» 4_怖いくらい高い「高過庵」
» 5_東京から移設、再建築した「五庵」
» 藤森建築への入室チャンスもあり!
1_藤森照信のデビュー建築

最初に訪れたい場所はやはり「神長官守矢史料館(じんちょうかんもりやしりょうかん)」。ここは中世から江戸時代まで諏訪大社上社の神長官を務めた「守矢家」に残された文書や史料、諏訪大社で行われる御頭祭でかつて供えられた神饌の再現展示などを見学できる施設です。
建物は1991年に建設され、これが藤森氏のデビュー建築。外壁はサワラの割板と土壁でできていて、屋根にはこの地方で多く産出される鉄平石と呼ばれる平らな石とスレートをのせています。

内部は天井の梁のサイズや間隔を変えたり、2階への階段の幅を狭めたり。遠近法の活用によって空間を広く見せ、水平垂直を歪めることで視線を誘導するなど、ユニークな作りが魅力です。
2025.10.06(月)
文・写真=石川博也