小説化、コミック化、ドラマ化とその活躍の場を広げている怪談ネットラジオ「禍話(まばがなし)」。2016年から毎週土曜日の深夜に生配信サービス「TwitCasting」で放送されているこの番組で語られるハイクオリティな実話怪談は、舌が肥えたホラーファンたちからも高い評価を得てきました。

 そんな禍話から今回は、深夜ドライブの果てにたどり着いた神社で初詣をしようとした若者たちが体験した恐怖をご紹介します――。

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新年の活気がまるでない神社

 車中の盛り上がりが嘘のように一同の口数は少なくなり、今や石階段を上る音だけが辺りに漂っていました。

 木々の間に張られたコードと辺りをオレンジ色に包む電球の明かり。出店から香るたこ焼きや甘酒の入り混じった心踊る匂い。そして、新たな新年への期待を胸に身を寄せ合う人々の気配……。

 Oさんが実家暮らしのときに毎年家族で訪れていた大きな神社にはそうした活気がありました。しかし、今いるこの神社には微塵もありません。

 ザリッ……。

 寒さと気疲れで妙に体が重くなっていたそうですが、Oさんたち一行はようやく石階段を登り終えて、神社の境内にたどり着きました。

次のページ 暗い神社で手を合わせる二人の姿