Kさんが耳にしたカップルが拝んでいた内容とは……

 側まで近づくや、おもむろに上着のポケットから財布を出して、小銭をジャラジャラと鳴らしてアピールを仕掛けるKさん。

 イラついている様子のKさんに一行が苦笑していると、彼の動きがぴたりと止まり、おずおずと身を縮めながら、カップルの顔を覗き込むように歩き出したのです。

「アイツどうしたん──」

 Oさんがそう言い終わらないうちに、顔面蒼白のKさんがこちらに全力で駆けてきました。

「逃げろ!」

そう叫び、一行を置いて石階段を駆け下りていってしまったのです。

「おい! なんだよ、どうしたんだよ!?」

「ねえ、どこ行くの!!」

 慌てて彼の後追いかけるOさんたち。一瞬、本殿の方にちらりと目をやりましたが、あのカップルはいまだに手を合わせていたそうです。

 車のところまで降りてきてようやく止まったKさん。全員、息も絶え絶えの中、Tさんが改めて「何があったんだよ!!」と声を荒げました。

 すると、Kさんは振り絞るような声でこう語り出したのです。

 カップルに近づいた時、Kさんは彼らがわずかに聞き取れるかという小声でブツブツと何かを言っていることに気が付いたのだとか。

 そっと顔を覗くように近づいてようやく聞こえてきたその声は、こんな内容を連呼していたそうです。

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