名店が誇る至高のパステル・デ・ナタをはじめ、知られざる奥深きポルトガル修道院菓子の世界へ。


時代のうねりが生んだポルトガルの「修道院菓子」

 ポルトガルを代表する焼き菓子「パステル・デ・ナタ」は“クリームのお菓子”を意味する名のとおり、とろりと溢れる滑らかなカスタードと香ばしいパイ生地が特徴のスウィーツだ。誰もがお気に入りの店を持つほどポルトガル全土で愛される伝統の味だが、パステル・デ・ナタはポルトガルスウィーツの氷山のほんの一角に過ぎない。

 遡ること約200年。保守派と改革派の内戦の末、それまで強大な力を持っていた修道院制が廃止となり自由主義の時代が幕を開けた。生存のために策を練った修道僧たちは、ある一つの希望を見出す。修道院では卵白を服の糊付けに使っており、大量に余った卵黄を砂糖と混ぜて焼いた黄色い菓子が数多く存在していたのだ。その販売で生活費を稼ごうとしたのである。

 現在もポルトガルの菓子店のカウンターには黄色い小さなスウィーツを並べた棚があるはずだ。それは激動の時代の小さなアイディアの記憶なのである。

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CREA Traveller 2026年夏号
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