CREA Traveller 2026 秋号は「ドイツ」特集。ベルリンのダイナミックな新旧のアートシーン、ドレスデンのバロック建築に彩られた光景、ミュンヘンのバイエルン王国の栄華が残る宮殿文化など、ドイツには“美の物語”が至るところに紡がれている。クレアトラベラー創刊以来初となるドイツ特集は、この国の様々な表情を切り取った。

CREA Traveller 2026 秋号
ドイツ 愛しき物語
特別定価 1,800円
1961年に築かれ、1989年、瞬く間に姿を消したベルリンの壁。その崩壊は、閉鎖されていたベルリンという街を多様なアートの発信拠点へと変えていった。40年余りを経た今もなお、アートの街は歴史と対峙し、問いかけ続ける。
崩壊後に生まれた“表現”の現在地
壁崩壊後のベルリンが生んだ多様で自由なアートシーン
世界でも屈指のアートの街、ベルリン。“年間の雨天日数をしのぐ”といわれる美術館・博物館の数はもちろん、ギャラリーやアトリエなど現代のアーティストたちが活動する場が数多あることも、アートの街たる所以だ。
「1989年のベルリンの壁崩壊後、自由で物価も低く、アトリエなどに適した空き物件が多いこの街へ、世界各国の若者やアーティストがこぞって移住しました。ベルリンは多国籍で開かれた国際都市となり、多様なアートの発信拠点ともなったのです。現在では不動産の高騰で若いアーティストが移住しにくくなっていますが、これからも積極的にサポートしたいですね」
そう語るのはベルリン観光局のルッツ・ヘンケ氏だ。2026年6月、ヘンケ氏をモデレーターとし、ベルリンの現代アートシーンを代表する人々によるトークイベントが、東京のアートスペース「SKAC」で開催された。
参加したのは、同年の「ヴェネツィア・ビエンナーレ」ドイツ館のキュレーターであるカトリーン・ラインハルト氏、同館代表アーティストのスン・ティウ氏、旧東ドイツ出身の画家ノルベルト・ビスキー氏。ラインハルト氏はまず、ドイツ館は彼女とティウ氏、そして制作半ばに病で急逝したアーティストのヘンリケ・ナウマン氏という東ドイツに縁を持つ三人の女性によるプロジェクトであること、二人のアーティストがそれぞれ東ドイツの歴史を再解釈し表現したことを解説した。
「ドイツ再統一後、旧西側・旧東側の不平等から一部の人々に怒りの感情が生まれ、移民排斥運動などの危険な傾向も見られます。決して現実化してほしくない未来に対してアーティストとして批判をしていくことが、私たちにできる貢献ではないかと考えました」
というヘンケ氏。一方ビスキー氏は、
「私の人生を最も決定づける出来事というのは、ベッドの中で眠りにいる時に起きました。まさに壁の崩壊です。目を覚ますと私は違う国、違う政治システムの中にいたわけです」
と、その衝撃的な体験を語り、旧東ドイツや軍隊による検閲など厳しい管理下にあった人々のストーリーを重ね合わせた新作3点を初公開した。
CREA Traveller 2026年秋号
※この記事のデータは雑誌発売時のものであり、現在では異なる場合があります。
