CREA2026年秋号の「1冊まるごと人生相談」特集が、現在好評発売中! CREA WEBではその一部を抜粋してご紹介します。
仕事や恋愛、生活スタイル……私たちの日常は悩みだらけ! 編集部に寄せられた「ふつうの相談」を“その道”のトップ・プロフェッショナルに聞いてみたら? 返ってきたのは、なんだか安心できる、心強いアドバイスばかりでした。
【相談】着ない服、使わない雑貨をついつい買ってしまう
ショップでは輝いて見えたのにうまく使いこなせず、放置したモノの山に自己嫌悪。単なる買い物とコレクション(蒐集)の境目はどこなのか。現代美術を扱うキュレーターの仕事から探ってみた。
答える人:キュレーター 藪前知子
「欲しいと思っても1日待って、それでも欲しければ買いなさい」という人がいますが、私はあまり意味
がないと思っています。大事なのは「手に入れたい!」と思った瞬間。これを着た自分、これのある部屋に、言葉にできない“未来”の姿を思い描いている一瞬のビジョンこそ、価値のある自己表現だと思うからです。
昨年、東京都現代美術館で、精神科医・高橋龍太郎先生の「高橋龍太郎コレクション」展を担当しました。先生は日本一の現代美術コレクターと言われる方で、大きすぎるものや、すぐ壊れてしまうもの、収蔵を拒むものも、あえて購入される。
作家さんにしてみれば挑戦を受けているような感覚になるそうで、購入という行為自体が、先生の自己表現、パフォーマンスに近いものになっているんです。その結果、膨大なコレクションの管理が大変になろうとも、細部に至るまで一つたりとも絶対に手放したくない、自分の幸せがそこに通っている、という執着の感覚が常人の域を超えている。まさにコレクターの鏡ですね。
着ない、使わない、存在を忘れてしまうようなモノを買ってしまうのは、その瞬間のビジョンや執着が足りないからかもしれません。そこが、単なるモノの集積とコレクションの分かれ目なのではないでしょうか。
藪前知子(やぶまえ・ともこ)
1974年東京都生まれ。東京都現代美術館学芸員。戸田建設本社ビルで展開中の「未完の都市:The Becoming City」(写真)のキュレーションも担当。
続きは「CREA」2026年秋号でお読みいただけます。
文=伊藤由起 写真=平松市聖
CREA 2026年秋号
※この記事のデータは雑誌発売時のものであり、現在では異なる場合があります。
