10月26日よりスタートしたNHK夜ドラ『青の花 器の森』。小玉ユキさんによる人気コミックを原作とした本作は、“やきものの町”として知られる長崎県波佐見町を舞台に、器づくりを通して心を通わせていく大人のラブストーリーです。

 主人公の波佐見焼絵付け職人・馬場青子を演じるのは松井玲奈さん。約1カ月半に及ぶ波佐見町での濃密なロケを経て感じた、ものづくりの魅力や撮影エピソードについてお話を伺いました。


深川栄洋監督の演出を何があっても信じよう

――主人公・青子を演じるにあたって、役に向き合う上で大切にされていたことを教えてください。

 今回は「深川栄洋監督の演出を何があっても信じよう」と心に決めて現場に入りました。これまでは自分の中で「きっとこういう感情に違いない」と組み立てて演じることが多かったのですが、まったく違うアプローチから入ってみると、たどり着くゴールは同じでも、そこに至るまでの感情の揺れ幅が大きくなったり、思ってもいない感情が生まれたりしてすごく面白かったんです。そこに、真鍋龍生役を演じる一ノ瀬颯さんのお芝居が入ってくると、どんどん世界が広がっていく感覚がありました。人を信頼すること、その場の空気も信じて飛び込んでみることの大切さを今回の現場で強く感じたので、これからも心がけていきたいなと思っています。

――初共演となった一ノ瀬颯さんの印象は?

 最初は“孤高の陶芸家・龍生のように少し硬さのある人なのかな”と思っていたのですが、役から抜けるとすごく柔らかくて優しくて、みんなと和気あいあいと過ごしている姿が印象的でした。作中で龍生がみんなのことを思い出すシーンがあるのですが、本当に一ノ瀬さんの目の中に波佐見での約1カ月半の記憶が映っているような感覚がして……。自分の経験と役の思いを合わせて表現できる素晴らしい俳優さんだなと感じました。私がバタバタしていてもどんな球でも受け止めて打ち返してくれるので、とても頼もしかったです。

――器を知るために陶芸を始められたそうですね。

 青子は絵付け職人なのでろくろはしないのですが、自分の手元に器が届くまでにどんな工程を経ているのかを知りたくて始めました。実際やってみるとすごく難しくて、集中していないと絶対にできない作業だなと実感しました。波佐見で出会ったろくろ職人さんたちは普段とても温厚なのですが、いざろくろの前に立つとピシッとして空気感が変わるんです。だからこそ、龍生のキャラクター性や、筆を使って絵を付けていく青子の柔軟さにも納得がいきました。

――これまでにどんな器を作られましたか?

 小鉢を4個と深めの丼1個、あとはフラットプレートを1枚作りました。まだまだ作りたいです。

――実際に波佐見焼の職人さんの「技」を目にしたときの印象は?

 歴の長さや経験の差もありますが、とにかく手が早くて迷いがないので「すごいな」とずっと尊敬の眼差しで見つめていました。絵付けの先生たちが筆で線を引いていく姿も美しくて。まるで指先からインクが出ているように見えて、魔法みたいだなと思っていました。ご指導いただいた先生方にはべったり張り付いて手元を見せていただきましたし、撮影場所の近くの窯元さんたちも気軽に作業を見せてくださったのがすごく楽しかったです。

――絵付けのシーンは吹き替えなしで撮影されたそうですね。

 「できれば手元は自分で挑戦したい」と監督にお願いして撮影していただいたのですが、実際は先生の手元が使われるかも……と試写を観るまではドキドキでした。絵付け自体が初めての経験だったので、筆の持ち方や顔料をつけて器のところに置く手さばき・筆さばきがリアルに見えるよう、先生の手元の動画を何度も見て研究しました。撮影の空き時間も共演者のみなさんと一緒に、素焼きの器に絵付けをしていたのですが、細かいスポイトを使って描く“いっちん”という技法は、先生方に「すごく上手だ」と褒めていただいたので、ぜひ注目していただきたいです。

次のページ 波佐見弁は日々のトレーニングのおかげでニュアンスを出せるように