どのような役においても内面の割り切れなさや矛盾をすんなりと表現し、人間の複雑さと単純さの不可思議なせめぎ合いを丁寧に表現されることは、松たか子さんの演技の大きな魅力。そんな松さんの人間力はどのような日常から紡がれているのか。SNSでも話題を集める飾らない素顔、そして目前に迫る50代という新たな季節に向けた率直な心境まで、自然体で話してくれました。

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子どもの頃から覚えている、格好いい大人とは

――映画『ナギダイアリー』にて松さんが演じている彫刻家・寄子は自分の生き方をしなやかに貫いている女性だと感じました。ご自身が自分らしくあるために大切にしていることはありますか。

 なんでしょうね。でも自分が気持ちよくいると、それが周りにも伝わるっていうことは、コロナ(の時期)から学んだと思うんですよね。文句を言っていても変わらないし、時間は過ぎちゃうし。だったら何があっても機嫌よく、気分のいいほうを選んでそっちにエネルギーを使うと、周りもそういうモードになっていくのかなと感じます。

――SNSで、好物のお蕎麦を鮮やかにすする姿や、「第49回日本アカデミー賞」授賞式で食事を完食されたことなど、日常のエピソードが潔くて素敵と女性たちから支持されています。そうした声について、ご自身ではどのように受けとめていらっしゃいますか。

 いや、そんな。早く食べるのは良くないって最近お医者さんに言われて、よく噛んで食べていこうと……でも蕎麦だけは無理ですって思っているくらいで、素敵って言われるようなことは何もないんですよね。皆さんどうしたんでしょう。(お蕎麦をすするのを見て)珍しいものを見たという、珍獣扱いなんじゃないですか。よくわからないですが(笑)。街には魅力的な人たちが本当に多くて、横目で見たり耳をそばだてて聞いたりして、その方たちから刺激をもらっています。

――ご自身がかっこいいと思う人、憧れの人物像はありますか。

 小学校の頃、印象に残った新聞の記事をスクラップする課題があって、紙面を探していた時のことです。当時に世界で初めて女性で国連難民高等弁務官(UNHCR)に就任された、緒方貞子さんの記事を見つけました。それまでは女性に対してかっこいいと意識したことがなかったのですが、彼女が「一国だけの平和はありえない」とおっしゃっていて。子ども心に漠然と、国連というよくわからない場所ですごいことを言っていると感動して、切り抜いた記憶があるんです。

――国際政治学者の緒方貞子さんは、世界でも女性として初めて、また日本人としても初めて国連難民高等弁務官に就任され、1991年から2000年までの約10年間にわたり世界各地の難民救済と保護に尽力されました。

 大人になるにつれていろんなことを忘れていますけど、そのことはよく覚えていて。自分が言いたいことや言うべきことを、自信をもって言える、という“責任力”がすごいと感じました。そういう意味でかっこいいと思ったので、責任が取れる人はかっこいいなと思います。

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