公開中の映画『ナギダイアリー』で、架空の町・ナギに暮らす彫刻家の寄子を演じる松 たか子さん。石橋静河さんが演じる“元姉妹”の友梨と再会し、架空の小さな町・ナギに変化が訪れます。撮影中は劇中の町のモデルとなった岡山県奈義町で、石橋静河さんと約1カ月間お隣のコテージで共同生活のように過ごしたとも。本作が描く人間関係の距離感や個々のセクシュアリティ、そして複雑な内面をもつ寄子という人物への思いについても伺いました。
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思いがけない展開も深田監督は受け入れてくれた
――深田晃司監督作品に初参加されて、オファーを最初に受けた時の思いはいかがでしたか。
声をかけていただけてすごく嬉しかったのですが、私でいいんだろうか、と。私は奈義町という場所を知らなかったですし、そこで暮らす人を演じることが、東京生まれ東京育ちの私に、なぜ監督のイメージの中でつながったんだろうと思いました。
――いくつかの問いを抱きながらも、嬉しい気持ちの方が大きかったのでしょうか。
深田さんが実際に奈義に住みながらずっと温めてきたお話であることを聞いて、そんな町ってどんな町だろうと、とても興味がわきました。深田監督の思いの厚さを受けて、そんな作品の中に入ってみたいなと思い、「ぜひやらせていただきます」という感じで始まりました。撮影が始まると、町の方々はよそ者の私たちを迎え入れてくれました。この場所のお話なので、奈義町で撮影できたことはとても幸せなことだと思います。
――このオリジナルの物語は平⽥オリザさんの戯曲『東京ノート』から着想を得て、深田監督が奈義町に3年にわたり断続的にトータルで約10カ月の長期滞在しながら取材して脚本を執筆されたそうですね。奈義町には⾃衛隊の駐屯地があり日常的に砲声が響く環境のなか、手厚い施策で出生率の向上を達成した一方で、進学や就職による若年層の都市流出、地域産業の衰退、消防団などコミュニティの担い手不足といった構造的な課題にも直面しています。
きっと奈義のことは町の抱える事情なども含めて、監督が誰よりも一番よく知ってらっしゃるのだろうなと。物語の中のナギにはまた違うイメージがあるみたいですけどね。私たち俳優がナギに加わった時に、監督にとって思いもよらない展開が起きても、それを監督が面白がってくれたらいいなと、そこに一緒にやる意味があるんじゃないかと思いました。
――深田監督とのやりとりで印象的だったことを教えてください。
監督には「こうしてほしい」というイメージが明確にある感じがしましたけれど、(石橋)静河ちゃんと私の間にその場で起こる曖昧な空気は、監督が受け入れてくれたような気がします。受け入れてくれたというか折れたというか、もうしょうがないんだ、この2人は、と諦められたのかわからないですけど(笑)。監督が受け入れてくれたり導いてくれたり、いろいろなやりとりができました。監督が、ナギのお話はこうでないと認められない、という頑ななスタンスではなく、私たちが混ざることを楽しんでくれたような感覚があって。そんなふうに監督がいてくださったのは本当によかったです。
