国際刑事裁判所(ICC)の所長を務める赤根智子さん。2026年8月に米トランプ政権から制裁措置を受けたとの報道から、応援の声が集まっています。
ここでは、著書『戦争犯罪と闘う 国際刑事裁判所は屈しない』(文春新書)を一部抜粋して紹介します。1975年に東京大学に入学した赤根さん。卒業後の進路を模索するなかで浴びせられた「理不尽な言葉」とは……。(前後篇の後篇/最初から読む)
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東大に入ってみると、「想像していたのとちょっと違うな」
1975年春、無事に試験に合格して、東京大学文科一類(主に法学部へ進学)に入学しました。お恥ずかしいことに、このときの私は、法学部を卒業すれば自動的に弁護士になれると思い込んでいた。世間知らずにもほどがありますね。
実際に東大に入ってみると、「想像していたのとちょっと違うな」と感じました。当時の私の東大生観は、みんな自分をエリートだと思っていて、人生順風満帆と思っている、というもので(後年、それは一種のステレオタイプな見方で、大きな間違いだと気づきましたけど)、官僚指向の人が多いとも感じていました。私にとっては、旭丘高校の仲間のほうがバラエティに富んでいて、また人間臭くて魅力的な人たちと思えました。
しかも、いざ法律を勉強してみると、どうも肌に合わない。法律の世界というのは、すべてを言葉で表さなくてはならないんですけども、これが私は不得意なんです。数式なら良いけど、妙に理屈を並べて執拗にまぎれのない言葉で示すというのは(これが法的思考というのでしょうか)あまりうまくできないので、苦労しました。
特に刑法や刑事訴訟法なんかは性に合わないと思った。のちに検察官や裁判官となる人間にあるまじき話ですが……。最初の2年くらいは、「法律とは何ぞや」ということがいまひとつ理解できないまま、停滞していたような気がします。
