10月17日、フランス全土で約55万人が参加する大規模デモが起き、各地で暴動に発展した。日本でも大きく報じられているこの大規模デモは、来年の大統領選にどのような影響を及ぼすのか。

 フランスに半世紀以上にわたって在住する、ジャーナリストの広岡裕児氏に話を伺った(全2回の2回目/初めから読む)。※発言内容は10月22日時点のものです

» 【初めから読む】「デモと暴動はまったくの別物」「外的要因というよりはアメリカ要因」各地で大規模デモ勃発…いまフランスで何が起きているのか?


ウルトラ左翼と問題地域の若者が「合体」

――デモが起きた10月17日、広岡さんはフランスにいらっしゃったわけですが、首都パリで起きているこういう動きは、現地ではどのように報道されていたのですか。

 どこも特別番組で大きく報じていました。今回の場合、2018年に発生した大規模な反政府デモ「黄色いベスト」運動の参加者が絡んだことで、全国的な運動になった。高校も各地方にありますから、これまではパリやリヨンなど大都市だけの話でしたが、今回は田舎にまで運動が発展しました。

 ただ、デモと暴動はまったく別物であることはフランス人もみな分かっていて、分かっていないのは外国メディアだけ。

 デモと暴動が大きく違う一つの証拠として、今回パリで暴動が起きたのはセーヌ川の北側の右岸のほうでしたが、南側のカルチェ・ラタンのような学生街はまったく何もなかった。新宿で大暴動が起きても、少し離れればこたつに入ってテレビを見ていたような、そういう状況です。北側だけで、しかもそれは略奪のための略奪でしたから、デモの要求とはまったく関係ない。

――日本だと「デモ隊が暴徒化した」と言われますが、それは違うという話がありました。どのタイミングで、なぜ暴徒が出てきたのですか。

 フランスにはウルトラ左翼という、内務省の選挙結果分析の分類でいう極左よりもさらに過激で、議会そのものを否定して暴力的な活動を行う勢力がいます。このウルトラ左翼は全国で5,000人ほどいるようで、フランスではテロリストと同じように公安が監視しています。なかにはロシアあたりから金をもらっている勢力もいるようです。

 このウルトラ左翼――「ブラック・ブロック」と総称される国際的な覆面集団が――10年ぐらい前から、大きなデモがあるときにはヨーロッパ中から集まってきて参加する。本来であれば彼らはデモ参加者に排除され、デモの中心には絶対に入れません。以前はデモが終わるときの混乱に乗じて、暴動を起こしていました。

 ただ最近ではデモの最前列に勝手に隊列を組んで警官隊を攻撃したり、資本主義の象徴であるマクドナルドや銀行などを襲ったりしている。マルセイユやリモージュの市役所が焼けたのはブラック・ブロックの仕業です。

 もう一つの変化が、スラム化した郊外などの問題地域の若者集団です。これはもう略奪するために来る泥棒なわけです。ギャングみたいなもので、初めからストライキなんか関係ありません。

 今回は、警察がデモの警備に集中している間に、マルセイユなどでブラック・ブロックが同時並行で攻撃を始めたのです。それを見た郊外の若者が「これはこれは」と便乗してどんどん集まってきて、略奪を行った。ウルトラ左翼は略奪はしません。壊すだけです。それに乗じて、火事場泥棒のように略奪しに来る若者が集まった。こうしてデモとは別として、暴動・略奪が発生したのです。

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