1902年の創業以来、イタリアのスパークリングワインの最高峰であり続けるフェッラーリ。史上最多9度の世界最優秀生産者賞を受賞する同ブランドが、9月9日から13日にかけて、創業の地・北イタリアのトレントにて「 Ferrari Trentodoc Camp(以下、フェッラーリキャンプ)2026」を開催した。
5日間にわたるキャンプには、ワインジャーナリストや世界有数の飲食グループのビバレッジディレクターなど、のべ17カ国39名が参加した。招待客の一人であるソムリエ、ワインディレクターの田邉公一氏が、キャンプの様子を語る。
世界各国のプロフェッショナルが一堂に会する
「トレントにあるフェッラーリ本社に足を踏み入れると、まずCEOのマッテオ・ルネッリ氏や、シェフ・ド・カーヴ(醸造最高責任者)であるシリル・ブラン氏が温かく迎えてくれました。キャンプでは同社の大規模なワイナリーの見学や、ぶどう畑での収穫体験、テイスティングやペアリングなど、濃密なプログラムの数々を堪能できました。世界各国のプロフェッショナルたちが、ワインへの情熱を共有する素晴らしい時間でした」
ウェルカムディナーを終えた翌日、フェッラーリ社による最初のプレゼンテーションは、トレント市街地を見下ろす丘陵地帯に位置する、ぶどう畑に囲まれた邸宅「ヴィッラ・マルゴン」で行われた。16世紀前半に建てられたこのルネサンス様式の邸宅は、トレント公会議の期間中、カール5世やヨーロッパ中から集まった枢機卿たちの滞在先として使用された歴史的にも重要な場だ。現在はフェッラーリ率いるルネッリグループの迎賓の場として機能しており、美しく保存された邸宅や壁面を彩るフレスコ画からは、同社の文化や歴史に対する敬意の深さが窺える。
ピクニックからミシュラン店まで。多彩な料理とのペアリング
キャンプでは、実に多彩な料理とのペアリングが展開された。パンやサラダが入ったバスケットとともにフェッラーリを楽しむピクニック形式のランチ、中世イタリア史を物語るブオンコンシーリョ城での立食ディナー、ワークショップで招待客たちが手作りで拵えたピッツァ、ガルダ湖を渡る船上での食事や、湖畔のレストランでのディナー……。
特に、招待客にフェッラーリの高いポテンシャルを感じさせたのは、ミシュラン一つ星レストラン「ロカンダ・マルゴン」でのディナーだったであろう。ヴィッラ・マルゴンから歩いて十数分、丘陵の中腹に位置する同店は、フェッラーリ社が自社のワインに合う料理を提供すべく2007年にオープン。地元で採れる野菜や湖の淡水魚を使った、繊細かつ独創的な料理が特徴だ。
キャンプで振る舞われたディナーでは、メインディッシュの霜降り牛肉に、フェッラーリの最高峰キュヴェ「Giulio Ferrari Riserva del Fondatore Collezione 2007」をペアリング。長期熟成によって生まれる複雑な風味と、牛肉の旨みが美しく重なっていく。
歴史と伝統に裏打ちされた、フェッラーリの底力。「ロカンダ・マルゴン」でシェフソムリエを務める林基就氏も、その上質なワインに魅了された一人だ。
「フェッラーリが生まれたトレントは、北イタリアに広がる3000メートル級の岩峰・ドロミティ山塊のふもとにあり、ぶどう畑は標高400mに位置しています。これまで様々なワイナリーを訪ねましたが、こうした山々に囲まれているテロワールというのは、他に見当たらないのではないでしょうか。高地の畑、日夜の寒暖差、さらに、近くのガルダ湖から吹く風……。豊かで非常に興味深いテロワールが、フェッラーリ特有のぶどうの酸やアロマなどを生み出すのです」
テロワールを学ぶプログラムも
サンゴ礁やプランクトンの堆積物が、地殻変動により隆起や浸食を繰り返して生まれたドロミティ山塊。壮大なアルプス山脈に囲まれた、美しいガルダ湖。フェッラーリには、トレントを囲む自然に刻み込まれた壮大な記憶が凝縮されているのだ。
フェッラーリ社は、こうした豊かな自然が生み出す恩恵にただあずかっているわけではない。キャンプでは、フェッラーリのテロワールと、それを守るための取り組みに関するプログラムも用意された。
二酸化炭素排出量を軽減させるためのソーラーパネルの採用、化学合成の除草剤や化学肥料を使用しない農業、土壌の保全活動。サステナブルな取り組みに関する説明を聴講したあと、招待客はぶどう畑へと向かい、畑の土をふるいにかけるワークショップを行う。ふるい網の上には、畑の下で息をひそめていた虫などの生物が現れ、フェッラーリが土壌の中に暮らす様々な生物によって支えられていることを明らかにする。
豊穣な恵みをもたらす気高い山々から、土壌に棲む小さな生物まで。雄大かつ繊細な自然が健やかに保たれることで、フェッラーリのワイン造りは続いていくのだ。
キャンプから見えてくる「フェッラーリの総合力」
5日間、全16もの珠玉のプログラムが用意された「フェッラーリキャンプ2026」。この多様なプログラムを通して見えてくるものとは何かーー。それは、フェッラーリが持つ“食と共存する力”だ。田邉氏がキャンプを振り返る。
「ピクニックでも、グランメゾンでも、ガルダ湖を渡る船上でも。こうしてキャンプを振り返ると、あの料理にはロゼが、この料理にはペルレが……と、どんなシーンにもフェッラーリはフィットしていました。キャンプを終えたあと、『あのレストランの料理に、フェッラーリが合いそう』というアイディアが、自分の中に浮かんでくるんです。他の招待客もきっと、“あのシーンにこのワインが合う”という気づきがあったでしょう。世界のどんな場面・どんな料理にもフィットしてくれる。そんなフェッラーリの総合力を感じました」
荘厳な場で開かれる華やかな慶事から、気軽なピクニックまで。食前酒としてはもとより、食中酒、食後酒として。そして前菜からメインまで。どのシーンの食事にもフェッラーリは寄り添い、互いの個性を引き立てる。この総合力こそフェッラーリの魅力であり、スプマンテの最高峰であり続ける所以なのだ。
田邉公一(たなべ・こういち)
WS代表取締役・ワインディレクター。著書に『ワインを楽しむ』『THE STUDY OF WINE』がある。映画『シグナチャー』にソムリエ役で出演。
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