NHKドラマ10『会社員』で吉田羊さんが演じるのは、取締役への昇進を目前にした50歳の会社員・宮木英理子。後篇では、この役と吉田さん自身が重なる場所、そして今だから考えることを聞きました。


“バリキャリ女性管理職”の英理子との共通点

――今年の春に演じられたリチャード三世について、CREAのインタビューで、己の弱さをねじ伏せて自らを奮い立たせている人物だという印象を受けたとお話しされていました。英理子にも、同じものを感じていらっしゃいますか。

吉田羊(以下、吉田) 英理子の場合は弱さとはまた少し違う、情に飲み込まれそうなところを、"会社のために"と奮い立たせている感覚です。でも、本心に蓋をすると言う意味では似ていますね。英理子も、リチャードも、両者私に通じているなとも感じますよ。

――ご自身と英理子が重なるのは、どんなところでしょうか。

吉田 体に無理をしてでも会社に尽くす英理子と同じように、私も、作品に入っている間は体の疲れを感じないんです。倒れるまでやっちゃう。だから危険でもあるんですけど。昔はむしろ、体が不具合をきたした、その痛みすらも生きている実感につなげていたりして。ハードルが高い役であればあるほど手応えがあって、生きている実感があるんですよね。

――それは今も続いていますか。

吉田 それが分かっているからこそ、ここ数年は意識的に休養を取るようにはしています。ただ、いい作品に関わって、いい俳優さんとやればやるほど目標値が高くなっていきますね。だから永遠にたどり着かないような気がしています。答えのない世界だからこそ。

――ストイックな方だと思っていました。

吉田 とんでもございません。弱いところばっかりなんですよね。自分に甘いし、すぐサボるんです。今日はこれをやろうと思うのに、やらずに寝たりとか。長く続けているランニングも、この撮影中は本当に朝が早かったりしたので、全然走れていないです。ただ、不思議と久しぶりに走るとちゃんと走れるんですよね。それはやっぱり長年続けてきたからこそ、自分が自分にくれたプレゼントだなと思います。

――意外です。

吉田 私、今回の英理子さんみたいに人参を目の前にぶら下げられたら、正しい判断ができる自信は正直ないですし。本当に弱いんです。でも、そういう弱さがあるからこそ、同じ弱さを抱えている人に気づくことができるし、お互いに理解し合うことができると思うので、それは弱さであり強さでもあるなと思います。

――では、ご自身の強さはどんなところだと思われますか。

吉田 自分の大切な人のために身を挺することができる強さを持っていると思います。

――努力を重ねてきた人は、周りにも同じものを求めがちです。

吉田 強要はしないけれど、少なくとも同じレベル感で努力している人と仕事をしたいとは思います。一方で、続ける大変さがわかるので、それを相手に要求することはできないです。でも、やった方がいいことあるよ、とは思います。サボってる姿もさらけ出せる上司だったら部下は気持ちが楽になるでしょうね。あと、サボりたいと思うのは、体のサインだとも思っていて、その時休息が必要なんだと思うようにしているんです。だから、体と心の声には従うようにしています。

次のページ 今回の作品が「キャリアの役」の最後かもしれない