この記事の連載

下積み時代から持ち続けてきた感謝の気持ちとポジティブさ

 各局からドラマのオファーが絶えず、1月期は『不適切にもほどがある!』、同時にNHK大河ドラマ『光る君へ』と、幅広い役柄を自在にこなし、作品ごとに圧倒的な存在感を放つ吉田羊さん。

 そんな吉田さんが今、全身全霊で向き合っているのが、かのシェイクスピアの名作を舞台化した『ハムレットQ1』。今回のハムレットは、現在よく上演されている戯曲の原型ではないかともいわれるQ1版で、吉田さんが“男性”であるハムレットを演じることでも話題に。『ハムレットQ1』にかける意気込み、そしてプライベートについてもお伺いしました!

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さすがに詮子さまの姿でハムレットは読めませんでした(笑)

――今年は1月期のドラマ『不適切にもほどがある!』、そしてNHK大河ドラマ『光る君へ』など、話題作への出演が続いていらっしゃいます。近い時期にまったく逆方向の違う役柄を演じるのは大変ではないですか?

 私も、自分でそれなりに器用なほうだと思っていたのですが、さすがに平安時代の詮子さん(「光る君へ」で演じている役)でハムレットの台本は読めなかったです(笑)。やっぱり気持ちが全然入らなくて。

 役作りにおいては、ありがたいことにメイクや衣装とか小道具が大きな助けになったので、意外とその扮装をすれば役の気持ちに入っていくスイッチになったというのはあります。苦労があるとすれば、心身が完全には休まらないことですね。何をやっていても、今年の前半はずっと頭の中にハムレットのことがありましたから(笑)。

 とりあえず、行き詰ったら『寝る』というのをやっていました。深夜2時、3時までセリフを覚えようとしたところで全然集中できないので、こうなったら、一回寝て、早起きしよう! みたいな感じで切り替えて。睡眠を取ることでリセットするというのを意識していました。

命を救える職業ではないけど、1時間だけでもこの世の憂さを忘れてもらえたら

――吉田さんは趣味も広くお持ちだと思います。お着物や食にもお詳しくて、ご自身で文章も書かれます。そういった興味や探求心の原動力はどこにあるのでしょうか?

 一番の原動力はやっぱり応援してくださるファンの方です。皆さんが楽しんでくださるのであれば、私が楽しいと思うこと、面白いと思うことをシェアして、一緒に楽しめたらいいなぁという気持ちでやっています。そんなふうに“誰かが楽しんでくれる”ことに自分が役立っているという実感が原動力になっている感じです。

 お医者さんみたいに、具体的に命を救えるわけではありませんが、少なくともドラマを観ている1時間、舞台を観ている2時間だけは、この世の憂さを忘れて、ふっと心が軽くなったり、日頃のツラさから解放させることができたらいいなと、そう願いながら演じているところはあります。

――常に興味のアンテナを張られているんですね。

 そんなことないですよ。私の興味はすごく狭いので(笑)。それこそ、今おっしゃった着物と食事に関しては、衣食住のうちの2つですからね。生きていくうえで絶対に関わるものですから、衣服であれば、より自分が心地いいものを身につけたい、食べるものであればより美味しいものを死ぬまでにひとつでも多く楽しめたらいいなという気持ちでやっています。

 でも、私は本当に思いつきでいろいろ言っちゃうので、マネージャーさんは間違いなく、すごく振り回されていると思います……(苦笑)。本当にたくさんの方にお力を貸していただき、カタチにしていただいているので、感謝の気持ちでいっぱいですね。

――着物イベントなどでは、実際に吉田さんにお会い出来たりするものもありますよね。ファンの方はドラマや舞台だけでなく、生身の吉田さんにお会いできるので嬉しさもひとしおだと思います。

 普段顔の見えない、インスタでコメントをくださる方々が「私、このハンドルネームでやっています」と言ってくださると、「ああ、あのコメントをくれた方なんだ」と繋がるんですよね。皆さん、お手紙もよくくださるので、実際にお会いすると「ああ、あのことを書いて送ってくださった方だ」と思い出すんです。

 皆さん、あれこれと工夫を凝らして、同じ封筒で送ってくださるとか、毎回絵を描いてくださるとか……。彼女たちなりのいろんな技で私に印象付けようとしてくださるんです。なので、自己紹介されたときに、ピンと来る方が何人かいらっしゃいます。

2024.05.11(土)
文=前田美保
写真=佐藤 亘
ヘアメイク=吉川陽子
スタイリスト=井坂恵(dynamic)