フィレンツェに留学していた14年前の夏の暑い日(ちなみにフィレンツェは盆地なので超超暑い)。冷たい飲み物が飲みたくてバールに入ってみたものの、目につくのはエスプレッソやカプチーノ。何を頼んでいいか分からず汗だけがダラダラ出ている私を見て、バリスタが「Caffe Shakeratoはどう?」と聞いてくれた。
よく分からないまま「SI SI」とだけ返事をしてカウンターで待っていると、マティーニグラスに入ったおしゃれな飲み物をスッと目の前に出してくれた。
エスプレッソの上にヘーゼルナッツ色の泡。本当にこれがおすすめなの……? と疑問に思いながら飲んだ瞬間、
はぁぁーなにこれ! うまぁぁい!
キンキンに冷えたエスプレッソに、ほのかに甘くて柔らかい泡。泡ってこんな美味しいのか! エスプレッソなのにゴクゴク飲める!
そんな私をニコニコしながら見ているバリスタ。思わず、以前からやってみたかったイタリア人が「美味しい」を伝える時に親指と人差し指をつまんで投げキスをするジェスチャーを送った。
この飲みものの名前は「カフェ シェケラート」。シェケラートの名前の由来は諸説あるようですが、英語の「shakeシェイク」が語源らしい。その名のごとく、シェイカーにエスプレッソと氷を入れてカクテルのようにシェイクし、マティーニグラスに注ぎます。注いだシェケラートはすぐに飲まないと泡がどんどん消えていくので注意!(ちなみにエスプレッソにウォッカ、砂糖などを入れて作る「エスプレッソマティーニ」というカクテルもあって近年人気だそう。名前がついているのになぜかマティーニは一滴も入っていない)
2023.05.30(火)
文=齊藤奈津子
撮影=釜谷洋史