
イタリア料理といえばトマト、トマトといえばイタリア料理というくらい、トマトはイタリア料理に“絶対に欠かせない食材”というイメージが強いのですが、実はその歴史は意外に浅く17世紀頃からなんです。

大昔からイタリアに存在していそうなトマトですが、元々の原産は中南米。
コロンブスが大陸を発見し、その後何でも持ち去るスペインのコンキスタドールによって1540年頃にまずはスペインに渡ったと言われています。
その後イタリアにはフィレンツェや当時スペイン領だったナポリに入ったのが最初とのこと。
当時トマトは、あの色や形から人々の間で毒があるとか、魔術に使われるとか、ネガティブな要素しかなく、もっぱら貴族たちの観賞用でした。

しかし16世紀初頭ひとりの腹ペコ過ぎたナポリの庭師により、トマトの運命に劇的な転機が訪れます。
当時イタリアは貴族と庶民の貧富の差が非常に激しく、庶民の多くは常に極貧で食べる事もままならないほどでした。
ある日、貴族に雇われていたひとりの庭師が、あまりにもお腹がすいていたため、庭の手入れの最中に鑑賞用のトマトを一か八かで食べてしまったのです。
食べられるとは思ってもみなかったトマトがイケる! という事が証明された瞬間でした!
「トマト、いけるってよ!」のウワサは瞬く間に市中に広がり、トマトは観賞用から食用へと一気に格上げ。その後数百年かけて品種改良され、今のように誰でも食べられる食用になったと言われています。
グラッツェ! ナポリの庭師。
2025.09.07(日)
文・写真=齊藤奈津子
撮影=釜谷洋史