冷蔵庫に気の利いたジャムがないとテンションが上がらない!

 イタリアに住んで初めて知ったのが、イタリア人が“ジャム好き”だったこと。それもそのはず、朝食に甘いパンを食べるイタリア人にとって、ジャムは重要なパートナー。通勤途中のバールでカプチーノなどと甘いパンを食べるか、家で簡単に済ませるか……。家で食べるのを選択した場合、冷蔵庫に気の利いたジャムがあるかどうかで朝のテンションが変わるわけです。

 日本のように朝から魚を焼いたりご飯を炊いたりと調理をすることはほとんどなく、家で食べるなら袋からパンやラスクをパパッと出して、ジャムを塗るくらいしかしないのがイタリアの朝ごはん。

 イタリア人とルームシェアしている日本人が朝食にご飯と味噌汁に焼き魚を食べようとしたところ、「えぇーーー!(朝からフルコースかよ!)」とドン引きされたという話はよく聞きます。

 甘党のイタリア人にとってはあまりにも衝撃的なのでしょう。私の友達のイタリア人も日本人の“フルコース朝食”に相当に驚いたらしく、同じ話をしつこく何度も聞かされ、辟易したのを覚えています。

 ちなみにイタリア語でジャムは「marmellataマルメッラータ」または「confetturaコンフェットゥーラ」といいます。マルメッラータは柑橘類と砂糖、コンフェットゥーラはそれ以外の果物のジャムを指しますが、イタリア人ももはや厳密には使い分けてなさそう。

甘いパン党にとってスーパーのジャムコーナーは楽しみのひとつ

 イタリアではスーパーマーケットでのジャム選びは至福の時間。日本のスーパーでジャムを探そうと思うと、意外と地味な場所にあって探すのにひと苦労、なんて経験ありません?

 一方、イタリアのジャムコーナーはというと……、イタリアの朝の定番、ラスクのようなカラカラのパン「フェッテ」が置いてある朝食コーナーがあり、そこに沢山の種類のジャムが堂々と鎮座しているではありませんか!

 イチゴやブルーベリーなど世界中でお馴染みのラインナップの他、バルサミコ酢や唐辛子など大人っぽいものやビオ果物、栗、いちじくなどあまり日本で見かけないような種類も多数あり、どれにしようか毎度、真剣に悩みます。

 日照時間も多く、本当にフルーツが美味しいイタリア。旬のフルーツをそのまま食べるのはもちろんですが、それでジャムを作ります。イタリアでは、フルーツは買うだけではなく庭や適当な場所(道路沿い、山、林など、私有地かどうか曖昧なところ)で収穫するのが当たり前。そして道端で採ったフルーツは、証拠隠滅かと思うスピードですぐジャムにします。

 ちなみにフルーツ以外にもトマトや玉ねぎ、ナスなど野菜もみんなジャムにしてしまうのがイタリア人。パンが食べたいのかジャムが食べたいのかもはや分かりませんが、美食大国イタリアの食材の楽しみ方のひとつであることは間違い無いです。

 ということで、今回はこれからが旬の野菜、ズッキーニのジャムをご紹介。甘いけど野菜っぽいズッキーニジャムは、パンはもちろん、パスタに和えたりお肉に添えたりしてもおすすめです。

2023.05.07(日)
文・写真=齊藤奈津子