郷土料理こそがイタリア料理の真髄!
イタリア各地方の郷土料理や、マンマが工夫して作った料理を研究している齊藤奈津子さんが、家でもできる簡単なイタリア料理をご紹介します。
イタリアでは珍しい“お酢と砂糖”の伝統料理
今回ご紹介するのは「アグロドルチェ」。
イタリア語で「甘酸っぱい」という意味の調理法で、アグロが「酸っぱい」、ドルチェが「甘い」を指しています。お酢と砂糖を使った甘酢料理のことですね。日本の「○○の甘酢煮込み」や「〇〇の甘酢炒め」と同じです。
基本的にイタリアで砂糖を使う料理はあまりないのですが、シチリア地方ではこのアグロドルチェをよく目にします。
野菜からお肉やお魚まで、お酢と砂糖がたっぷり入った料理はほとんどがアグロドルチェと呼ばれているんですよ。
シチリアではワインビネガーを使うのが主流ですが、たまーに北イタリアの方でも、特産物・バルサミコ酢を使ってアグロドルチェを作ることがあります。
同じアグロドルチェでも、料理が黒かったら北部、白かったら南部の料理かな、と覚えておくといいでしょう。
日本で人気の“あの料理”も実はアグロドルチェ⁉
アグロドルチェの代表的なお料理のひとつに、日本でも広く知られている「カポナータ」があります。
茄子やトマトなどの野菜をクタクタに煮たもので、日本だと”色々な夏野菜のトマト煮込み”のようなイメージが強いですよね。
カポナータの伝統的なレシピにはお酢と砂糖が入ります。現地で食べるとかなりお酢が利いているので、日本との違いに驚くかもしれません。マンマによっては砂糖もたっぷり入れます。これもシチリア料理の特徴のひとつです。
よくフランスのラタトゥイユと間違われますが、実は全く違うお料理なんです。
シチリア人はシチリアが大大大好きなので、フランス料理と間違えたりすると、本当に真顔で露骨に嫌な顔をするのでくれぐれもご注意を。
ちなみにカポナータは、同じシチリアでも地域によって入れる材料が微妙に変わります。それぞれに「○○風」というように地方の名前が入るので、シチリアでいろんな地域のカポナータを食べ比べるのも面白いかもしれないですね。
2021.07.18(日)
文・写真=齊藤奈津子
撮影=佐藤 亘