郷土料理こそがイタリア料理の真髄!

 イタリア各地方の郷土料理や、マンマが工夫して作った料理を研究している齊藤奈津子さんが、家でもできる簡単なイタリア料理をご紹介します。


「カチ? カキ? なんて読む?」

 イタリアでも日本同様に柿はかなりポピュラーな果物で、秋から冬にかけて市場やスーパーでよく目にします。

 イタリア語を覚えるのに必死だった頃、単語を学ぶために、よくマーケットや市場に行っていました。

 ある日、市場に行くと柿を発見!

 洋梨や房付きのブドウなどお洒落な果物が並ぶ中、私たち日本人に馴染みのある柿が並んでいるのをみて、なんだかちょっとほっこり。

 値札を見ると「Cachi」の文字が。

 市場のおじさんにつづりのまま読んで「カチをください!」と頼んでみると、「カチじゃなくてカキだよ」と言われました。

「え?カキ?」

 なんと柿はイタリアでも「カキ」だったのです。

「柿は日本からヨーロッパに渡ったから名前もそのままなんだよ」だとか。

 イタリア語を覚えに市場に行ったのに、逆にイタリア人に日本語を教わるというちょっと不思議な経験でした。

 そしておじさんは最後に「柿はスプーンですくって食べるんだよ」と教えてくれました。

 たしかにイタリアの柿は日本の柿よりも大きくやや縦長で、一体どうやって食べるんだろうというくらい熟した状態で売っていることが多く、初めて見るとちょっとびっくりします。

 多くのイタリア人は柿をスプーンですくえるほど熟すのを待つからです。

 私もおじさんに言われた通り、熟した柿のヘタを切りスプーンですくって食べてみたところ……

 美味しい! おじさん、美味しいよ! 味も食感も今まで食べてきた日本の柿とはまた違う美味しさ!

 柿の甘さが濃縮されたとても豊潤な味で、ひと言で言うと柿果汁100%のプルプルゼリーという感じ。

 すっかりイタリア式が気に入りました。ありがとう、おじさん!

 他の食べ方でよく目にするのがジャムやジェラートで、多くのジェラート屋さんが旬の限定フレーバーとして出しています。

 この時期にイタリアへ行く事があれば、市場かスーパーで「Cachi カキ」を探し、イタリア式で食べてみてください。

 その際は是非日本語の発音で「カキ」と注文を! イタリア語が分からなくても通じますよ!

 ということで今回は、日本の柿を使った柿のジャムレシピと、私の好きな柿ジャムの食べ方をご紹介します。

 オリーブオイルをちょい足しするのですが、ふくよかな味わいが広がってオススメです。お酒にも合いますよ!

2020.12.09(水)
文&写真=齊藤奈津子
撮影=佐藤 亘