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工場の前でTさんが見つけたもの

「でも、お祈りには誘われたよな、何回か」
「そやそや、誘われたわ。□#Щ腴のオヤジにも、あの女にもな。ウチら断ったけど」
「……もしかしたら社員さんらが首吊ったアレ、自殺やなかったんかもしれんで」
「いや、でもアレは自殺やってば」
「ちゃうくて……えっと、なんて言うんや? 生け贄か」
「さすがにオヤジさんのあの死に方は、警察も変死ちゃうかって疑うてたよな。ウチら3人で葬式行ったとき、怖い顔したオッサン何人もおったやろ? あれ、絶対警察やって。あの葬式、めっちゃ変やったわ。普通は開けとく棺桶の窓もきっちり閉まってたしな……とか言うてたら、ほら、着いたで」
気がつくと一同は会社の前に着いていました。
街路灯の灯りだけが照らす薄暗い外観。
灯りが乏しかったからなのか、はたまた冷めたと思っていた酒がまだ頭を揺さぶっていたからなのか。今となっては不明ですが、その時Sさんの目に映った会社看板の社名部分だけが、目の焦点が合わないかのようにぼやけていたそうです。
「門空いてんで」
「お前、入る気かよ! やめとけって!」
中に入っていくTさんたちを咎めているうちに、Sさんの足は敷地内に踏み込んでしまっていました。
そして、Tさんが工場のシャッターの前でソレを見つけてしまったのです。
2025.08.11(月)
文=むくろ幽介