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「走れ、走れ、走れ!!」

「走れ、走れ、走れ!!」
Sさんの目の前を、彼のことなど見えていないかのようにTさんたちが駆け抜けていきました。彼らはなぜか、会社のはじまで行くとぐるりと左に曲がり、しばらくするとまた絶叫しながらSさんの目の前を駆け抜け、また左に曲がっていくのを繰り返していました。
Sさんたちはその場から逃げてなどおらず、ずっとあの会社の周りをぐるぐると回り続けていたのです。
「ろぉーーーーくぅーーー……」
「振り返るなぁー!!」
「もう走れないって!!」
「ごーーーーおぉーーーー……」
バタバタと目の前を駆け抜けていくTさんたちの奥、会社のどんよりとした暗がりから街灯に照らされたこちらに向かって、背の高い人影がこちらに歩いてくるのが見えたそうです。
「うっ……」
2025.08.11(月)
文=むくろ幽介