今回ご紹介するのは、猫は猫でもネコ科の動物たち。日本の動物園にはさまざまなネコ科が暮らしていますが、静岡県浜松市にある「浜松市動物園」には2種の素敵なネコ科夫婦がいます。
なんだかうらやましくなってしまうような2組のネコ科カップルを前後篇でご紹介します。こちらはアムールトラのソーンとローラです。
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「どの動物園でもトラは1頭で暮らしているのですが……」
1種は、アムールトラのソーンとローラ夫婦。基本、トラは単独生活する動物。繁殖期間以外に、ソーンとローラを同居させたのはどんな理由があったのでしょうか。飼育担当の川崎大輝さんに、詳しいお話を伺いました。
「どの動物園でも、トラは大体1頭で暮らしています。これはトラ自体が繁殖期以外は単独で生活する習性を持つ動物だからですが、この2頭が繁殖シーズン以外でも同居できているのは、とにかく仲がいいから。特に、メスのローラがオスのソーンのことをすごく好きなんです」
「トラのメスは発情のタイミング以外はオスに対して排他的になることが多く、特に出産や子育ての時期はオスの気配を感じるだけで怒り出すことも珍しくありません。
しかし、ローラは出産直後からソーンに会いたがりました。ローラ自身の様子から会わせたほうがストレスにならないだろうと判断して、産後数日目くらいから柵越しに顔合わせさせたんです。すると怒ることもなく普段通りに鼻を鳴らして柵越しに擦り寄って挨拶をしていて、子育て期間中の気分転換になっているようでした。
子育て期間中は子を連れているためソーンとの同居はしていませんが、子が自立したあとは2頭の様子を見ながら同居を再開し、徐々に発情以外のタイミングでも過ごすようになっていきました」(川崎さん)
アムールトラは現在するトラの亜種の中で最も体が大きく、その大きさはネコ科の中でも最大です。ロシアから中国にかけて流れるアムール川流域に生息していて、野生では絶滅が危惧されています。
「絶滅危惧種であるアムールトラは世界中の動物園が連携・協力しながら繁殖計画を立てて繁殖に取り組んでいます。同じペアばかりが繁殖してしまうと血縁に偏りが生じてしまうため、血統登録を行って個体群統計学や遺伝学に基づいて適正に管理をしながら計画立てた繁殖を行います。
ソーンとローラは既に4頭の子を残したペアなので今の2頭の同居は繁殖目的ではありませんが、本人たちの気質も考えてストレスなく過ごせるように同居を実施しています。繁殖シーズン以外でもこんなに仲の良いトラは珍しいかもしれません」(川崎さん)
この日も朝から放飼場へ出ていた2頭。午前中は近寄った時に顔を擦り合わせてることはあったものの、別々に好きな場所を見つけてのんびりと過ごします。風は強いものの、春のような暖かい日差しの中、ぐっすりと眠る2頭。時に場所を変えながらそれぞれ眠る姿を、来園者はそっと見守ります。
