今回ご紹介するのは、猫は猫でもネコ科の動物たち。日本の動物園にはさまざまなネコ科が暮らしていますが、静岡県浜松市にある浜松市動物園には2種の素敵なネコ科夫婦がいます。

 なんだかうらやましくなってしまうような2組のネコ科カップルを前後篇でご紹介します。こちらはライオンのトム(オス)とサナ(メス)です。

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オスの象徴・たてがみがなくても……

 もう1種ご紹介したいのはライオンのトムとサナ夫妻です。19歳と高齢ですが、2頭とも元気に暮らしています。

 実は、トムは10年以上前に患った病気の影響でたてがみが抜けてしまい、オスライオンの象徴ともいえるたてがみがありません。しかし、容姿が変わっても2頭の仲の良さは変わることはありませんでした。

「ライオンにとって見た目の変化がどれくらい大きなことなのかは分かりませんが、トムのたてがみがなくなってからも2頭の関係性はまったく変わりはありません。もしかしたら『トムが昔よりすっきりしてるなぁ』と思っているのかもしれませんが、だからと言って嫌いになることはないと思います。このペアじゃなくても、多分そうなんじゃないでしょうか。

『たてがみが立派なオスはメスからモテる』という俗説も聞いたことがありますが、恐らくそんなことはないと思います。たてがみはオス特有のもので、テストステロンという男性ホルモンが作用して発達するといわれていますが、テストステロンは狩りに成功したり、交尾に成功したりしたときなどに多く分泌されるといわれます。

 だから、たてがみが立派なオスがモテるというより、オス同士の縄張り争いを制して、狩りも上手く自分の群れにメスを迎えて子孫を残せるくらい強いオスが、結果的に立派なたてがみを持ったオスになりやすいということなのではないでしょうか。もちろん、たてがみが立派でなくとも強いオスもいるので、必ずそうなるわけでもありませんけどね。

 ライオン界のモテ基準は本当のところは人間には分からないので、もしかしたらたてがみが立派なオスが好きなメスライオンもなかにはいるかもしれませんが、トムとサナの様子を見る限りでは本人達はあまり気にしていないように思えます。野生では弱ってしまった時点で生き延びることが難しいでしょうから、たてがみが抜けるくらい体調が悪くなったオスとメスが一緒にいるということ自体が、野生ではあまりないかもしれませんね」(飼育担当の川崎大輝さん)

 陽気に誘われるように、午前中からそれぞれの場所で横になっている2頭。動物園に行くと寝てばっかりだという印象があるライオンですが、そもそも1日のうち14時間から20時間ほどを寝て過ごす動物で、トムとサナも高齢だからそうしているわけではありません。この日は一緒にいる気分ではなかったのか、適度の距離を保ちながら、居心地のいい場所を探しつつ、横になっていました。

 午前中はトムが草むら、サナは上の岩場と少し離れたところで寝ていていましたが、目を覚ましたサナ。岩場を慎重に一歩ずつゆっくりと進みながら、トムの近くに寝る場所を変えます。夕方に再び観に行くと、放飼場の隅で並んで寝転ぶ姿がありました。

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