ウェブ漫画サイト「モーニング・ツー」にて連載中の、今日マチ子さん作『るすばん猫きなこ』(講談社)の1巻が2026年3月23日に発売になります。
主人公は、人懐っこい赤ん坊猫のきなこと、海辺の家で暮らす小学1年生のここな。ある日、突然起きた地震と津波と原発事故により家族と離れ離れになり、その土地に取り残された彼らは、家族の帰りを待って“おるすばん”を続けることに。
一方、故郷を失って別の場所で生きるここなの友達・さきをはじめ、ここなの母やさきの家族など、被災した人々の思いを乗せて時間が過ぎていきます。
東日本大震災から15年の節目となるいま、作者の今日マチ子さんに、作品に込めた思いを伺いました。※この作品はフィクションです。この記事は、一部作品のネタバレを含みます。
「10年間、心の奥にあったモヤモヤ」——震災と向き合うまで
――まずは震災をテーマに描こうと思ったきっかけからお伺いします。
東日本大震災のあった2011年に「震災をテーマに描きませんか」と言われたことがありました。そのとき『みつあみの神様』(集英社)という作品を描いたのですが、当時はまだ震災の直後すぎて、しっかり向き合う心の準備ができなかったんです。描き方を模索した結果、ファンタジー寄りで創作部分が多い作品になっています。
いずれは現地取材してから描きたい、と思いながら時間が流れて。2021年に思い立ち、初めて東北の被災地を巡る旅をしたんです。
――おひとりで行かれたんですか?
そうです。きちんと計画を立てたわけでもなく、なんとなく回れそうなところを追っていく感じ。双葉町(福島県)、気仙沼(宮城県)、陸前高田(岩手県)……3日間、駆け足で。
もう10年経ってそんなにニュースにものぼっていないし、「東北の復興」という言葉も聞こえてくるし、被災地にはふつうの日常が戻っているんだろうと思っていた。
でも、そうではなかったんです。かつては街があったのに更地のままの場所、ゴーストタウンのような街を見て衝撃を受けました。同時に、私は10年間何をしていたんだろうと。そこで今回は、実際の震災をベースにした作品を作れないか模索し始めたんです。
――「向き合わなければ」という使命感を感じたのは?
東日本大震災が非常に大きなできごとであったことはもちろん、私は人々の反応のすさまじさにも圧倒されすぎていました。全体をつかめないまま数年がたち、だんだん震災報道も少なくなって。なんだかわからないまま、もう忘れようとしている状態になってしまった。
東京の人間として福島の電力を使ってきたことに負い目もあり、考えなくてはと思いつつ考えられてない。そのモヤモヤはずっと心の奥にありました。いっそ一切考えないか、自分の中で作品化して深く考えるかどっちかにしなくてはと思っていました。結果、東北を訪れたとき、しぜんに描こうという気持ちになりました。
――具体的に描き始めるまでには、どのようなステップがあったのでしょうか。
その後も何度か被災地に足を運び、地元の方にご案内していただいたり、絶句するような生々しいお話も伺いました。
当初は原発避難区域に残ってひとりで暮らし続けている人を主人公にしようと思ったんです。今の千代子さんみたいなキャラクターですね。でも、そこから広がらなくて。
――震災をテーマとしながら、猫が重要な役を担う。このユニークなアイディアはどこから?
そのころ「震災からもうすぐ15年だけど、15年というのは猫の一生とだいたい同じだ」と気づいて。その15年を、猫の一生という切り口で捉えなおしたらどうだろうと思いついたんです。ちょうど私の猫が14歳で亡くなったあとでした。そういえばこの猫は震災のときはまだ小さかったなと思い出したりして。
