ミニアルバム「graine」のすばらしさ

 彼女の近年のご活躍も調べてみる。
 やっぱりセンスの塊みたいな人である。2021年の「なんだっけ」の令和的疾走感、これはすごい! そして2024年にリリースされたばかりのピアノ・インストゥルメンタル・ミニアルバム「graine」がすさまじく良かった。心の底に流れる水って、こんな音がするのかも。この心地よさ、まだの方、ぜひ体感してほしい。歌がなくてもピアノの音までウルウルである。お手上げだぜ、大塚 愛……!

 さらに検索すると、なんと彼女は個展まで開催していた。『AI OTSUKA 20th ANNIVERSARY ART EXHIBITION AIO ART supporting radio J-WAVE』! 7月29日まで……くっ、時すでに遅し。せめてニュースだけでもと辿っていくと、書道も絵も驚くほど美しい。とても才能のある方なのだと今さらながらしみじみ思う。

 嫉妬するほど全方位かわいくて多才。ところが端々からなぜか感じる不器用さと、自己評価の低さ。それがまた不思議な色気と可愛さにつながるというループ。ちょっと面倒臭くもあるけれど、「その面倒くささ、なんか好き」と目を閉じ聴いてしまう。そうそう、そもそも恋とは、そしてLOVEとはとっても面倒くさいもので、それこそが醍醐味だった。

 オバハンになって久々に聴いた彼女の歌声は、まさに長年忘れていた恋心そのもので、苦しい。持て余す。
 けどたまらなく高まる。よし、せっかく出会えたのだ。この夏は彼女の歌で、誰かを好きになった時の、なんともいえない浮遊感を思い出そう。

 あの幸せと楽しさを、もう一回!

他の記事も読む
» 響け50周年の空に!「いざ『メリーアン』奉歌――」アルフィーの“歌朱印”を貰ってきた
» 「ジャックは死ぬ必要があった」『タイタニック』のディカプリオが好きな意外な“日本アニメ”とは?
» 「青木崇高のビンタを仮想体験」ゴジラのMX4Dがすごすぎて椅子の上でタコ踊りしてしまった件
» 「顔文字の^一^状態のバカリズム」どれだけ遅れようが意地でも振り返る紅白歌合戦レポ2023年
» VIVANTから大奥まで。地上波ドラマの逆襲!? 2023年ヒットと激熱ドラマ大賞
»「梅吉よ、泣かないで」『ブギウギ』大阪パートの柳葉敏郎の明るさと悲しさ
» 「人間から魔法使いに昇格」ある日突然聴きたくなるTHE ALFEEのミステリー
» ナイス加齢!ドラマ「シッコウ!!」の情けない織田裕二から香る和製ジャック・ニコルソンの予感
» 「誰かトムを止めて!」ムチャをする61歳トム・クルーズに熱視線!
» ワイルド&タフ&エモーショナル! 止まらないTM NETWORK 結成40周年の進化

田中 稲(たなか いね)

大阪の編集プロダクション・オフィステイクオーに所属し『刑事ドラマ・ミステリーがよくわかる警察入門』(実業之日本社)など多数に執筆参加。個人では昭和歌謡・ドラマ、都市伝説、世代研究、紅白歌合戦を中心に執筆する日々。著書に『昭和歌謡出る単1008語』(誠文堂新光社)など。
●オフィステイクオー http://www.take-o.net/

Column

田中稲の勝手に再ブーム

80~90年代というエンタメの黄金時代、ピカピカに輝いていた、あの人、あのドラマ、あのマンガ。これらを青春の思い出で終わらせていませんか? いえいえ、実はまだそのブームは「夢の途中」! 時の流れを味方につけ、新しい魅力を備えた熟成エンタを勝手にロックオンし、紹介します。

2024.08.02(金)
文=田中 稲