人は、自分にないものを持っている人に惹かれる。これを「相補性の法則」というそうだ。自分に足りない部分を無意識に相手で補おうとする心理からくるらしい。

 なるほど納得である。思えば、私も昔から、自分には1ミクロンも要素がない、ツッパリ女子に憧れまくった。誰かに嫌われるのが怖くて、エヘラエヘラと笑い赤ベコのように頷く毎日だった小中学生の頃。部屋で一人きりになってから「うおーん! ちゃんと怒ればよかった」とクッションに八つ当たりしていた高校時代。凛とした姿勢、自分の意見を貫く強さがあり、先生すら一目置く迫力を持つ「3年B組金八先生」の山田麗子(演:三原順子  現:三原じゅん子)や、スケバン刑事・麻宮サキに夢中になったのは、まさに法則通り。我ながら世のセオリーに従順である。

 桜の代紋入りの重合金ヨーヨーに憧れ、

「スケバンまで張ったこの麻宮サキが、何の因果か落ちぶれて、今じゃマッポの手先。笑いたければ笑えばいいさ。だがな! てめぇらみてぇに魂までは薄汚れちゃいねぇんだぜ!」

 というセリフにシビレたあの頃から40年――。ドラマ「スケバン刑事」を、改めて振り返るってんだよ(ついついスケバン口調)!!


「花とゆめ」連載のバイオレンスに満ちた原作マンガ

 ドラマ放送は40年前の1985年だが、私が麻宮サキと初めて出会ったのは、もう少し前。姉の本棚にあった原作マンガである。

 花とゆめコミックス「スケバン刑事」、作者は和田慎二さん。ページを開くと、少女マンガのヒロインとは思えない、鋭い目つきのサキがガシガシ戦い血を流していた。しかも、死刑囚として収監されている母の恩赦を得るため、警察の手先である「学生刑事」としての活動を余儀なくされるという、とんでもない設定である。この母がまた魔女みたいに恐ろしく、次々と出てくる敵も妖怪みたいにえげつない。

 学園モノとは思えないけっこうなエロスと血なまぐささが、一コマ一コマに炸裂。こ、こりゃすげえぜ……と思わず言葉遣いが悪くなりながら、バトルに夢中になった。

 この「スケバン刑事」、伝説の演劇マンガ「ガラスの仮面」と同時期の連載だったというから、当時の「花とゆめ」、すごすぎて怖い! 確か柴田昌弘さんの「ブルー・ソネット」というエスパーマンガもこの時期だったんじゃない? 好きだったわ~……と、当時のマンガ事情を話し出すとやめられない止まらない状態になるので、ドラマに話を戻そう。

2025.09.24(水)
文=田中 稲