『おむすび』のナベべに胸キュン! 緒形直人にまたまた恋をする

 定期的に、しかも忘れた頃にひょっこり現れマイハートを蹴り飛ばす、誠実フェイスのニクいヤツ……。緒形直人、その人である。

 お人柄のよさ全開の笑顔。そこからにじみ出る静かなる迫力――。私は彼の魅力を人に語るとき、よく「鹿威し(ししおどし)」に喩える。高級庭園にある、カコーンという音がするアレである。あるだけでその場が格調高くなり、音に心が癒される。緒形直人ソックリではないか!

 ただこの喩え、今のところ誰に言ってもピンときてもらえない。そこで、別の表現を考えて彼の魅力を布教しようと思っている。信頼度1億%の笑顔。日本一カッコいい地蔵顔――。うむむ、もうひとヒネリ考えるとして、話を先に進めよう。

 私がCREA WEBで彼について書くのは今回で3度目である。1回目は2017年、「緒形直人に再び恋をする理由とは」というタイトルで彼を取り上げた。映画『64 -ロクヨン-』の犯人役、『人間の証明』の刑事役を見て、1989~90年の『予備校ブギ』『同・級・生』以来、25年ぶりに恋に落ちたという熱きラブレターのような記事を書いた。

 第2回は2022年。ドラマ『六本木クラス』の松下元刑事役として緒形直人が出演し、ハマっていて興奮。これまた記事にした。

 そして今回。NHK朝ドラ『おむすび』の渡辺孝雄・通称ナベさん役にこれまたこれまた興奮して今キーボードを叩きまくっている。くっ、どんだけ私を恋の穴に落とせば気が済むのか、緒形直人!

 しかし熱い思いは時としてタイミングを逃すもの。この原稿、実は昨年11月半ばから書き始めていたのだ。心を閉ざすナベさんに泣き「この絶妙な演技、緒形直人さんにしかできーん!」とキーを叩いては「この程度の文章じゃ熱量が伝わらーん!」とダカダカとDeleteを押す……を、繰り返す日々。そうこうしているうちに、ナベさんはカスタムシューズを売りギャルたちの人気者ナベべになり、階段でケガをし、店を売り、ギャルピースをし、東京に行ってしまった(泣)。ちょっと待て待て。待っておくれよ!

 展開の速さにオロオロしているうちに、ナベさん再登場ということで、今さらでも言いたい。ナベさん役を彼に指名した方の目は確かだと! 制作統括の宇佐川隆史氏が、緒形さんの起用理由を語っている記事(ENCOUNT編集部2024年11月25日記事)を読んで赤ベコの如く頷く。

「孝雄は、理解できないほどの感情を持つ、すごく難しい役。だからこそ、緒形さんのお名前は自然と出てきました」

 自然と名前が出てくる。わかる、わかるぞ。「やっぱり緒形さんよね」「そうそう緒形さん」とジワジワ満場一致になっていくキャスティング会議の様子が見えるよ!

 ちなみに、エピソード106の、東京へ旅立つナベさんの破顔一笑とギャルピースは、朝ドラ屈指の名表情だと思う。喪失感から立ち直った最強のパワーが詰まっていた。観ているこちらまで泣き笑い。

「超アゲー!!」

 画面に向かって思わず一緒に叫んだ人、手を挙げて。私も叫んだ!

2025.02.18(火)
文=田中 稲