「一月往ぬる 二月逃げる 三月去る」という言葉がある。正月から三月までは時間があっという間に過ぎる、という意味だ。わかるッ。私も今まさに思っている。「もう紅白歌合戦を見てから1カ月近く経ったの? 早ッ」と。B’zの「ultra soul」でハイッと飛び上がったのが昨日のことのようだ。

 ああ、目をつぶるとメリーゴーランドのように紅白の名シーンが巡る。そもそも今回は11月19日の出場歌手発表から熱かった。「THE ALFEE出るの! GLAYも!? ちょ、南こうせつにイルカさん!? 髙橋真梨子も復活うぉぉ!!」

 ヨッシャヨッシャとパソコンの前で乱舞し膝を強打し、1カ月という時間をかけてどうにか冷静さを取り戻したのに、NHKは容赦なし。12月25日、B’z出演決定のお知らせがクリスマスプレゼントフォー・ユーとばかりに届いたのである。

 FBIから超スゴ腕の交渉人をスカウトでもしたのか!? とにもかくにもここ数年で一番ドストライクだった紅白。すっかり日が経ってしまったが、こんなん、何度思い出してもいいですからね(ミルクボーイ風)! 特に印象的だったアーティストを振り返っていきたい。(敬称略で失礼します)

【前半】10周年グループのあの人に恋をした!

 名曲「切手のないおくりもの」に乗ってオープニングからフルスロットル! GLAY・TERUのカメラ目線で手ピストルバッキュンポーズ、バービー人形な椎名林檎ともも、司会の3人有吉弘行、橋本環奈、伊藤沙莉がお辞儀をするたびに真後ろにいるTHE ALFEEの3人がもれなくドアップで映る「司会からのTHE ALFEE、3めくりスタイル」など、濃厚な絵面に早くもSNSが沸いた。

●ME:I「Click」

 挨拶で使ったハンドマイクが回収されないまま曲に移るも、「これも小道具です」とばかりに堂々と歌い踊るリーダー、MOMONAさんの貫禄よ。さすがアイドル人生二周目だと唸る。

●こっちのけんと「はいよろこんで」

 まあるい笑顔と超高速ステップ、リズミカルな歌詞、アミアミのベストが限りなくナイス! オロオロしながら一緒に踊るTHE ALFEEの桜井、石川さゆりにほっこり。

●Da-iCE「I wonder」

 もう10周年とは知らなんだ! しかも歌のうまさは認識していたが、全員こんなにスペシャルキュートとは……。特に金色の短髪の彼、笑顔の威力に鍋を食う手が止まる。今回の「紅白でいきなりフォーリンラブ」枠。

●放送100年特別企画「歌って踊ろう! KIDS SHOW」の「パプリカ」

 Number_iの平野紫耀がマンガのように飛び跳ね、Mrs. GREEN APPLEの藤澤涼架がムチウチを心配するレベルで首を曲げ踊る姿が微笑ましい。この曲は人を幼子に戻すサブリミナル効果でも仕込まれているのだろうか。

●新浜レオン「全てあげよう」

 所ジョージと木梨憲武が応援するだけあり、歌声も表情もまぶしいほどに陽キャラ。「膝スライディング(膝スラ)」という摩擦どんとこい的新技&西城秀樹リスペクトも好感度大だ。令和の歌謡界を照らしてほしい。頑張レオン!

●山内惠介「紅の蝶」

 アルコ&ピース、とにかく明るい安村、もう中学生がダンサーで参加。ドッと心配になったが、長年紅白を盛り上げてきた花柳糸之社中がしっかりフォロー。客席の通路を使っての舞が美しくてアッパレ!

●tuki.「晩餐歌」

 父親に出世払いするからと頼んでこの曲を出したというエピソード、70年代を思わせるフォーク声、歌い終わった後の15歳らしい素朴な受け答え。私の好みフルコース! すくすく育ってほしい。

●水森かおり「鳥取砂丘~紅白ドミノチャレンジSP~」

 スターターを任されたスケードボードの堀米雄斗選手は、前回の堺雅人同様、気の毒なほど緊張されていた……。しかし無事に指チョンを決め、3万6千個のドミノが倒れ、二十世紀梨、松葉ガニ、名探偵コナンという鳥取の三大名産品が姿を現した。そのなかで朗々と歌唱する水森の姿は、貫禄の一言。

●郷ひろみ「2億4千万の瞳 放送100年 GO!GO!SP」

 ヒロミGOがジャペアアンと歌いながら西川きよしにツッコミを入れられ、ジュリアナダンスを楽しみ、Windows95発売の列に並ぶ! 合成がとても自然で表情も最高。いっそ100年分ガッツリ「郷ひろみ歌って踊ってタイムトラベル」という映像を作ってほしいと思ったのは私だけではないはず。

2025.01.24(金)
文=田中 稲