トレンディ御三家の補欠的存在

1967年9月22日生まれ。この手の地蔵顔は本当に老けない。

 突然だが「トレンディ御三家」と聞いて、誰を思い浮かべるだろうか。

 斎藤さんと、あと残り二人は誰? と迷っているそこのあなた。お若い。そして違うッ。

 「吉田栄作・加勢大周・織田裕二」とスラスラ出てくる人は何人ぐらいいらっしゃるだろうか……。

 80年代後半から90年代前半、男は肩パッドもしくは肩巻きカーディガン、女は巻き髪ボディコンという暑苦しいにもほどがあるスタイルで惚れたハレタを展開していたトレンディドラマ。上記の人気俳優3人が特に大人気だったのだ。

 が、今回思い出してほしいのは、次点・つまり4番手くらいに位置していた緒形直人である。世間知らず的なベビーフェイス、イケてるセリフがあまりそぐわない誠実オーラは実に新鮮で、女性たちの母性本能を全発動させた。

 かくいう私もその一人。ドラマ「予備校ブギ」「同・級・生」は物語などどうでもよく、彼のトレンディになりきれない固まった笑顔を見にいったものだ。

 が、いつからだろう。「世界遺産の声の人」程度の存在になり、もはやアウトオブ眼中に……。ところが昨年、彼は突如、再び私のハートにKNOCKIN' ONしてきたのである!

 そう。その運命の作品……それは映画『64 -ロクヨン-』である!

緒形直人のスゴさを確認するだけなら後編のみでじゅうぶんなのだが、話が掴めないし、なにより製作陣に失礼なので前編から観よう。写真は、映画公開記念特装カバーを巻いた原作小説『64』(文春文庫)。

 そもそも私は坂口健太郎君の麗しいお姿を拝むために観た。

 ところが話が進むうちに、過去の罪の証拠となるメモを口に頬張り、佐藤浩市にボコられ、川に顔を沈め、水を飲みのたうち回るオッサンに視線がくぎ付けに。

 ちょっと待て……。これ緒形直人だよね??

 昔超真面目だった同窓生がワイルドで色気ムンムンになってた的な衝撃を受け、「ヤダ、イケてる……」。私の純情な感情が動いたのであった。

『64 -ロクヨン-』オフィシャルサイト
http://64-movie.jp/

2017.07.25(火)
文=田中 稲