原型は留めていないが風間三姉妹に感動したⅢ

 三代目は浅香唯さん。「スケバン刑事Ⅲ 少女忍法帖伝奇」(1986年10月30日スタート)は、学生刑事という設定はどこへやら、妖怪じみたアクの強い忍者たちと戦うドラマになっていた。しかもヒロインはヤンチャな陽キャ、サキというより「ドラゴンボール」の悟空っぽい風間唯。実際「麻宮サキ」という名が使われるのは、タンカを切るときだけだった。原作を踏襲しているのはもはや「少女がヨーヨーを使って戦う」という設定のみ。和田先生が激怒したというが、そりゃそうだろう。「Ⅱ」の鉄仮面といい「Ⅲ」の忍者といい、制作陣の中に、歴史陰謀論が大好きな方がおられる気がする。

 原作ファンとしては「こんなのスケバン刑事じゃないよ!」とスルーすべきだったかもしれない。が、悔しいことに、私はほぼ全話観た、観てしまった(泣)。だって、三姉妹のバランスが絶妙なんだもの! 人懐っこくてすぐ怒る唯。ツンデレな由真、冷静で面倒見のいい結花。時にケンカしながらも助け合い、折り鶴やリリアンという「それホントにいける?」と首をひねりたくなるような道具を駆使して、忍者をバッタバッタと倒していく姿に泣き笑いした。風間三姉妹が歌う主題歌「Remember」は名曲!

 さきほどから「名曲!」と連呼してしまっているが、いやもう「スケバン刑事」シリーズはすべて、主題歌が本当に素晴らしいのだ。どれだけ路線がおかしくなろうとも、エンディング、流れてくる曲を聴けば「なんだかんだ今回もいい話だった」と思わせるパワーがあった。

 ああ、懐かしい。80年代半ばのアイドル全盛期、若きエネルギーを詰め込んだような「スケバン刑事」。思えば私は当時、心の中でうごめいていた正体不明の敵の成敗を、彼女たちに託していたのかもしれない。意味なく荒ぶる気持ちや、あちこちに暴走する歪んだ不安をぶちのめすには、あれくらい奇想天外な設定とパワーが必要だったのだ。

 現実にはありえない、おかしなことだらけ。だからいいのだ。それがドラマだ!

 昭和にはスケバン刑事が、平成にはケータイ刑事がいた。令和にも学生刑事がぜひ現れてほしい。モヤモヤしているのが馬鹿馬鹿しくなるような、ド派手な設定、求む!

「スケバン刑事 HDリマスター版 Blu-ray BOX」

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発売・販売:東映ビデオ
©和田慎二・東映

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Blu-ray BOX1:2025年12月3日発売
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Blu-ray BOX2:2026年9月9日発売
各22,000円(税込)
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©和田慎二・東映

田中 稲(たなか いね)

大阪の編集プロダクション・オフィステイクオーに所属し『刑事ドラマ・ミステリーがよくわかる警察入門』(実業之日本社)など多数に執筆参加。個人では昭和歌謡・ドラマ、都市伝説、世代研究、紅白歌合戦を中心に執筆する日々。著書に『昭和歌謡出る単1008語』(誠文堂新光社)など。
●オフィステイクオー http://www.take-o.net/

Column

田中稲の勝手に再ブーム

80~90年代というエンタメの黄金時代、ピカピカに輝いていた、あの人、あのドラマ、あのマンガ。これらを青春の思い出で終わらせていませんか? いえいえ、実はまだそのブームは「夢の途中」! 時の流れを味方につけ、新しい魅力を備えた熟成エンタを勝手にロックオンし、紹介します。

2025.09.24(水)
文=田中 稲